「GWだろ、ホテルや新幹線、取れたのかよ?」


「なんとかね、一泊だけ。」


「大変だねぇ。」


「仕方ないよ。それに向こうは昼間はずっと練習だし、夜は門限があるから、どっちにしてもそんなに会える時間があるわけでもないし。」


「遠恋の上に、時間もあんまり合わないなんて、厳しいよな。」


「それは覚悟の上。」


私は力強く答える。


「でも、いいなぁ。夢を叶えた幼なじみを遠くから見つめ、応援してるなんて、なんか素敵じゃない。」


なんて言ってくれる美優は現在フリー。


「そんなきれいな話じゃないよ。」


照れる私。


「そうだよな。会えないって、やっぱり辛いよな。」


そう言うノムは、大学のサークルで知り合った同級生の彼女と、就職後はなかなか時間が合わなくてと嘆いている。


「なに言ってんの。野村くん達なんて、その気になれば、土日でいくらでも会えるじゃない。それをしないんだか、出来ないんだかは知らないけど、それはつまり、その程度の仲ってことなんじゃないの?」


「なっ・・・。」


美優に決め付けられて、言葉を失うノム。


「とにかく、私は由夏のこと、断然応援しちゃうな。大変だとは思うけど、絶対貫いてね、彼とのこと。」


「うん、ありがとう。」


思わぬ美優からのエールに、私は笑顔で応える。


「でもさ、岩武。」


「うん?」


「でもこのままなら、お前いずれは彼氏のとこ、行くんだろ?」


「まぁ、ね・・・。」


「そしたら、仕事どうすんだよ?」


「えっ?」


真っ直ぐにノムに聞かれて、返事に詰まる。すると


「そんなの仕方ないよね、由夏。」


と美優が。


「プロ野球選手の奥さんとして、旦那さんを支えなきゃね。だって健康管理とか大変みたいじゃない。晩御飯のおかずだって、栄養バランスや量を考えて、何品も作らなきゃならないんでしょ。私、テレビで見たことあるよ。」


「うん・・・まぁそんなこと、私も聞くけど。でもすぐにすぐ、そうなるって話があるわけじゃないし、今は早く一人前のファッションデザイナーになることが一番だから。」


そう言うと、私は話題を変えた。