誤解しないで欲しいんだが、仙台という街は、自然の豊かな、美しいいい街だったと思う。ただ、俺達一家はたまたま人の相性に恵まれなかっただけだ。
だから、あくまで俺の気持ちとしてはだが、仙台を本拠地にするEからの指名に、複雑な思いがあったのは事実。
由夏にも、そこをツッコまれたが、かと言って、それで入団を拒否するなんてあり得ないし、むしろ俺程度の選手を指名して下さってありがとうございますと感謝しかない。
それに俺の野球選手としての武器であるピッチャーとキャッチャーの二刀流も、話せば長いが、中学での先輩とのトラブルが、そのキッカケになっている。やっぱり仙台という街は、俺の人生の重要なポイントを与えてくれたことは間違いない。
その因縁浅からぬ街で、プロ野球選手としてのスタートを切った俺。マスコミの注目とファンからの大きな声援が、やがて負担になって来るまで、大した時間は残念ながら掛からなかった。
キャンプで一軍に抜擢され、勇躍沖縄に乗り込んだ俺は、すぐに周りの先輩達との力の差に、カルチャーショックに近い衝撃を受ける。
いや、先輩はおろか、即戦力との呼び声の高い同期入団のドラ1川上との力の差もはっきり自覚せざるを得なかった。
「焦るな、まだ始まったばかりなんだ。我々はお前に即、結果を求めてはいない。」
前田監督は、そう声を掛けてくれたが、球団に俺の獲得を掛け合ってくれたと聞いているこの人に、恥はかかせなくないとかえって、焦るばかり。
ピッチャーとしての力不足に落ち込みながら、今度はキャッチャーとしての練習に。
俺はもともとピッチャーだから、プロでもピッチャーとして大成したいと思っているけど、とりあえず即プロで通用するなら、キャッチャーの方が可能性が高いと思っていた。
そう思いながら、今度はキャッチャー装備でブルペンに入ると、いきなりエースの佐々木雅裕さんの球を受けろとの指示。
ビビりながらも、プロのエースのボールを受けられることにワクワクしながら構えると、まだ調整段階で、どう考えてもせいぜい7割くらいの力しか出してないはずの佐々木さんのボールをキチンとミットに収めることが出来ない。
取れないわけじゃない、上手く伝わるかわからないけど、ミットにボールが収まった瞬間のパーンという音。それが周りのキャッチャーと違うんだ。ちゃんとミットの芯で取れてない証拠だった。
結局、30球ほど受けた中で、満足した音が出たのはせいぜい半分くらい。
「すみませんでした。」
俺が頭を下げると
「気にするな。プロ入り直後の君に、キチンと捕られるようじゃ、俺も困る。」
佐々木さんは俺を慰めるように笑いながら言ってくれたけど、高校時代には怪我でプロには進めなかったけど、超高校級ピッチャーと言われた白鳥徹さんの球を受け、大学でも大澤ら何人かのプロ入りしたピッチャーの女房役を務めて来た俺のプライドは、ズタズタだった。
だから、あくまで俺の気持ちとしてはだが、仙台を本拠地にするEからの指名に、複雑な思いがあったのは事実。
由夏にも、そこをツッコまれたが、かと言って、それで入団を拒否するなんてあり得ないし、むしろ俺程度の選手を指名して下さってありがとうございますと感謝しかない。
それに俺の野球選手としての武器であるピッチャーとキャッチャーの二刀流も、話せば長いが、中学での先輩とのトラブルが、そのキッカケになっている。やっぱり仙台という街は、俺の人生の重要なポイントを与えてくれたことは間違いない。
その因縁浅からぬ街で、プロ野球選手としてのスタートを切った俺。マスコミの注目とファンからの大きな声援が、やがて負担になって来るまで、大した時間は残念ながら掛からなかった。
キャンプで一軍に抜擢され、勇躍沖縄に乗り込んだ俺は、すぐに周りの先輩達との力の差に、カルチャーショックに近い衝撃を受ける。
いや、先輩はおろか、即戦力との呼び声の高い同期入団のドラ1川上との力の差もはっきり自覚せざるを得なかった。
「焦るな、まだ始まったばかりなんだ。我々はお前に即、結果を求めてはいない。」
前田監督は、そう声を掛けてくれたが、球団に俺の獲得を掛け合ってくれたと聞いているこの人に、恥はかかせなくないとかえって、焦るばかり。
ピッチャーとしての力不足に落ち込みながら、今度はキャッチャーとしての練習に。
俺はもともとピッチャーだから、プロでもピッチャーとして大成したいと思っているけど、とりあえず即プロで通用するなら、キャッチャーの方が可能性が高いと思っていた。
そう思いながら、今度はキャッチャー装備でブルペンに入ると、いきなりエースの佐々木雅裕さんの球を受けろとの指示。
ビビりながらも、プロのエースのボールを受けられることにワクワクしながら構えると、まだ調整段階で、どう考えてもせいぜい7割くらいの力しか出してないはずの佐々木さんのボールをキチンとミットに収めることが出来ない。
取れないわけじゃない、上手く伝わるかわからないけど、ミットにボールが収まった瞬間のパーンという音。それが周りのキャッチャーと違うんだ。ちゃんとミットの芯で取れてない証拠だった。
結局、30球ほど受けた中で、満足した音が出たのはせいぜい半分くらい。
「すみませんでした。」
俺が頭を下げると
「気にするな。プロ入り直後の君に、キチンと捕られるようじゃ、俺も困る。」
佐々木さんは俺を慰めるように笑いながら言ってくれたけど、高校時代には怪我でプロには進めなかったけど、超高校級ピッチャーと言われた白鳥徹さんの球を受け、大学でも大澤ら何人かのプロ入りしたピッチャーの女房役を務めて来た俺のプライドは、ズタズタだった。