「その理由は実は簡単。私達カレカノじゃなくなったから。私達は別れたから。1番大切な時に、私が聡志を応援してなかったから。聡志が怒るのは、当然だったと今でも思ってるよ。」


「・・・。」


「だから、聡志がもう、私のことを好きでなくなったんなら、仕方ないと思ってた。諦めようと思ってた。でもやっぱり自分の気持ちに嘘はつきたくなくなってさ。」


「由夏・・・。」


「夢ってさ、1つだけじゃないよね。いくつもあってさ、優先順位があってさ。その順位だって、変わっていくよね。そして諦めなきゃいけない夢も出て来て、でも譲れない、諦められない夢って絶対あるよね。」


「そうだな。」


と頷いた俺に


「それが私にとっては、聡志なんだよ。いつまでもずっと聡志と一緒に居ることなんだよ。私はやっぱり聡志が好き。だから決めたの。私は聡志を勝手に好きなままでいて、聡志を追いかけて行こうって。」


そう言い切って、俺を見つめる由夏の瞳が、あまりにも綺麗で、俺は思わず吸い込まれそうになる。


「と言うことで、さ・・・。」


「由夏。」


「あなたをどうしても諦められなくて、またノコノコ仙台までやって来た、一途で、とびきりキュ-トで、ラブリィな幼なじみはいかが?今なら、結婚前提で、もう一回付き合ってあげてもいいよ。」


そう言うと、小首をかしげ、満面の笑みで俺を見つめる由夏。こいつ・・・反則だろ、これ。


「あのなぁ、前にも言ったと思うけど、お前いい齢して、自分のこと、ラブリィでキュ-トとか言ってんじゃねぇよ。」


辛うじて、そう反撃するけど


「いいじゃん、本当のことなんだから。それより、お返事は?」


今度は、そう言って上目遣いまでしてくる。これは、もう敵わねぇ・・・よ。


「参りました。是非是非よろしくお願いいたします。」


そう言うと、俺は深々と頭を下げた。そして、俺が頭を上げた瞬間、由夏が俺の胸にダイビングして来る。


「由夏・・・。」


それは俺がずっと求めていた温もり、失ってずっと後悔していた香り・・・それが今確かに俺の腕の中にある。帰って来てくれたんだ・・・俺は思わず、由夏の細い身体を抱きしめる。