翌日、仕事が終わった後、私は長谷川さんに連絡をした。今から半年ほど前、私は突然彼女から、連絡をもらった。高3の時に、文化祭実行委員だった長谷川さんと、ケ-番を交換したことをすっかり忘れていたくらいに、疎遠だった私達。


何事かと思えば、昨日、悠が言ってた通りの宣戦布告。そしてそれからわずか2月足らずで、私は長谷川さんに屈した形になった。反撃する勇気もなく、負け犬に甘んじてきた私が、親友二人の後押しもあって、もう1度、彼女に立ち向かう決意を固めた。


まだ仕事中かなと思い、その時は留守電に入れようと思ってたけど、あにはからんや、彼女はあっさりと、電話に出た。


『もしもし。』


「ご無沙汰してます、岩武です。」


『そろそろ掛かって来ると思ってた。桜井さんから聞いたんでしょ?私がこっちに帰って来たこと。』


「うん。それで、あなたにお話がある。」


『私達の間で話すことって、1つしかないよね。』


電話で話してるのに、火花が散ってるのが、はっきり意識できる。


「私、聡志が諦められないの。」


『それで?』


「聡志に会いに行こうと思う。構わないでしょ?」


『私が仙台を離れたのを知って、チャンスだと思ったの?』


「うん。」


私はハッキリと頷いた。その私の返事に携帯の向こうで、長谷川さんが一瞬、息を呑んだような気がしたけど


『どうぞ、ご自由に。』


とすぐに返して来た。


『どうせ、ダメって言っても、行くんでしょうし。気が済むなら、どうぞ。でも、彼が会ってくれるといいね。だいぶ怒ってたからね、あなたのこと。また、この前にみたいに、門前払いされるのが、オチじゃないの?』


冷笑気味のその言葉に


「それでも構わない。もう1度、ちゃんとあいつと話したいんだ、向き合いたいんだ。やっぱり、自分の夢を、そんな簡単に諦めることなんか、出来ないよ。」


私はそう答える。


『夢?』


そう聞き返して来た長谷川さんに


「そう、私の夢は小さい頃から変わってない。私の夢、それは聡志とずっと一緒にいること。私の夢は聡志だから。」


昨日も同じことを悠に言った。そして今、私は自分の気持ちをもう一度、確認するかのように、長谷川さんに言った。


『そっか、夢か・・・。』


そうポツンと呟いた、長谷川さんの声が聞こえて来るまで、少し間があった。