「いつからバレてたの?」


「前からです。」


「えっ?」


「陽菜さん、ずっと平賀さんのこと、好きでしたよね?」


「由夏・・・。」


「私は、そう思ってました。」


「そっか、そうなんだ・・・。」


陽菜さんは驚いている。


「少なくても、自分では、一回会社を辞めるまでは、あの人のこと、頼りになる上司としか思ってなかったつもりなんだけど、再会して、帰って来てくれって、頭を下げられた時に、自覚しちゃった。それでも意地張って、半年だけとか言っちゃって、どうしようって、あとで自分で動揺しててさ。バカみたいだよね。」


そう言うと、陽菜さんは照れ臭そうに笑った。


「あの日も、あんたとあの人が、2人きりだと思ったら、いたたまれなくなっちゃってさ。時間も忘れて、夢中で事務所行ったら、まさにあんたに告白してる真っ最中で、ドアの前で固まっちゃったんだ。」


と今度は苦笑い。


「由夏。」


「はい。」


「これからどうなるかは、全然わかんないけど、私はあの人とやって行くつもり。仕事はもちろん、プライベートも。今はまだ、あの人こそ、あんたのこと吹っ切れないだろうけど、でも焦らずやってくよ。」


「すみません。」


「あんたが謝ることじゃないよ。謝んなきゃいけないのは、私の方。」


「陽菜さん・・・。」


「あんた、全部なくしちゃったじゃない。これからどうするの?」


そう言って、陽菜さんは真剣な表情で、私を見る。


「ご心配掛けてすみません。でも私は大丈夫です。言っときますけど、私が会社を辞めたのは、自分の為。陽菜さんの為じゃありません。」


「由夏・・・。」


「もう1回、自分を見つめ直す為、自分の進むべき道を探す為に、私は会社を辞めるんです。私は結局、今まであいつしか見てこなかった。あいつとずっと一緒にいる未来しか、考えて来なかったんです。でも、もうその道はなくなってしまった。確かに今の私は、なんにも見えなくなりました。でも、だからこそ、もう1度、改めてやり直してみます。時間はかかるかもしれないですけど、大丈夫。私はまだ、若いんですから。どうか、ご心配なく。」


そう言って、私は明るく笑った。