少し落ち着いたあと、私は、力なく、来た道を引き返すしかなかった。まさか、ここまで強烈に拒絶されるとは夢にも思っていなかった。


長谷川さんを連れて来て、私に見せつけて・・・ううん、結局そういうことだったんだ。気が付かなかっただけで、2人はずっとつながっていたんだよ、だってあまりにも手回し良すぎるじゃない。


私が呑気過ぎたんだよ、聡志を信じ過ぎたんだよ。長谷川さんの聡志への想いを甘く見過ぎてたんだよ・・・。


私達の愛は、結局距離に負けたんだ。人間なんて、そんな強いものじゃない・・・。


溢れ出そうになる涙を懸命に堪えて、私は電車に乗り込む。この街に、もう私の居場所はない。その悲しい現実に胸をつかれる。


だけど、現実問題として、今夜神奈川に帰り着く術はない。一夜の宿を求めなくてはならない。それが見つかるのか、もし見つからなかったら、どうしたらいいんだろう・・・。不安が募る。


仙台駅に着いて、スマホで調べたビジネスホテルに電話してみると、驚くくらいあっさりと予約が取れた。


ホッとして、すぐにチェックインして、部屋に駆け込むと、堪えていた涙がもう、止めどなく溢れ出て来る。着替えることも忘れ、ベッドに倒れ込むと、あとは悔しいくらい号泣した。


なんで、昨日の午後から、携帯を一度も確認しなかったんだろう。


なんで、今の仕事を最後にするって聡志にちゃんと伝えなかったんだろう。


なんで、あんなに聡志に言われっ放しで、私、何も言えなかったんだろう。


なんで、なんで・・・いろいろな思いがこみ上げて来る。


昨日まで、想像も出来なかった現実に今、私はいる。


「もう終わりにしよう。」


聡志は言った。そして今、あいつの横には長谷川さんがいる。私の指定席だったはずの場所に彼女がいる。


聡志は今頃、彼女と語らい、彼女を抱きしめ、そして彼女を・・・。


それは耐え難い屈辱、認め難い現実。だけど、もうどうにもならない。


去年の夏に、長谷川さんが聡志の前に現れた時点で、結局今日の敗北は決定してたの?そんな弱い想いじゃない、そんな脆い愛じゃないって信じてたのに・・・。