平賀さんと陽菜さんの同情と心配を背に、重い気持ちと足を引きずるようにオフィスを出た私は、始発に乗り、帰宅の途についた。


既に、夜は完全に明け、朝の陽はまぶしいくらいだっだが、私の心は重い。


あれこれ、いろいろなことを考えるけど、どうにもならない。なんで1度でも携帯を見てみなかったんだろう、とは今更ながら思うけど、でも現実を知ってしまったら、仕事にならなかったろう。


それでも、やっぱりそうすべきだったのかもしれない・・・。


いろんな考えが巡る。でも、徹夜明けの疲れた頭と身体で何を考えたって、何か前向きなことや気持ちが上向くようなことが、浮かんでくるわけがない。


「ただいま。」


私が力なくそう言って、家に入ると心配顔の母親が、玄関まで出迎えてくれる。


「由夏・・・。」


「聡志、良かったね。私は・・・応援出来なかったけど。」


その私の言葉に、お母さんの表情がやっぱりという表情になって、ため息をつく。


食卓に入ると、疲労の色を濃くしたお父さんが、朝ごはんを懸命に掻きこんでいる。


聞けば、案の定、明日も仕事なんだからと、お母さん達が止めるのも聞かずに、昨夜は遅くまで、塚原のおじさんと大はしゃぎだったらしい。いい歳したおじさん2人がなにやってるの?って呆れる反面、その輪の中に、入れなかった自分がやっぱり寂しくなる。


そんな両親に、これまでの経緯を話すと


「まぁ仕方ないじゃないか。なんともタイミングが悪いことになってしまったが、お前だって、やるべきことをやっていたんだから。聡志が面白くないのも、無理はないが、でもそれをいつまでもグズグズ言うような、器の小さい奴じゃない。安心しろ。」


とお父さんが慰めてくれる。


「うん、そうだよね。一休みしたら私、やっぱり聡志の所に行って来る。会って、謝るべきとこは謝って、あとはいっぱい祝福してあげないと。」


「そうね、とにかくそれが一番よ。会えば、わだかまりなんて、すぐ吹っ飛んじゃうわよ。口でなんて言ったって、聡志くんだって、由夏が来てくれるのを、きっと首を長くして待ってるはずだから。」


「うん!」


両親の励ましで、私はようやく、気持ちを切り替えられた。