「どうも、話がよく見えんな。それで結果は?」


「先発して、5回を投げて、プロ初登板初勝利を挙げたって書いてあります。」


ニュースを調べてくれた陽菜さんの言葉に、私は思わず、座り込んだ。


(じゃ、私は聡志の大切なデビュー戦を何も知らずに、応援1つ出来ずにいたってこと・・・?)


そんなバカなことが・・・信じられない。けど、そんなバカなことが現実に・・・。


「ちょっと失礼します。」


私はオフィスを出ると、聡志に電話を掛けてみる。こんな時間に寝てるかもしれないのに、でもいても立ってもいられなかったのだ。


するとスリーコール程で


『もしもし。』


明らかに不機嫌な聡志の声が。


「聡志、こんな時間にごめん。あの、昨日、一軍で投げたんだって?私、締め切りの仕事に追われてて、今、気が付いて・・・。」


『そうだろうな。LINE、未読のままだったし。』


「ごめんなさい。遅くなっちゃったけど、プロ初勝利、おめでとう。」


『ありがとう。』


聡志はぶっきらぼうに答える。


「あの、聡志・・・。」


『仕方ねぇだろ。お前には、何よりも大切な仕事だったんだから。だから・・・気にする必要なんか、ねぇだろ。』


そんな棘のある言い方しなくても・・・。悲しくなるけど、でも聡志が怒る気持ちもわかる。


「とにかく、これからそっちに行くね。今日、休みもらったから・・・。」


『いいよ。』


「えっ?」


『疲れてるんだ、なにせ突然のことだったし。それにお祝いのメッセージ、山ほどもらって、返信するのに、あとどれくらいかかるか。とにかくそれが終わったら、ゆっくり眠りてぇんだ。だから、遠慮してくれよ。』


「聡志・・・。」


『お前だって、徹夜明けで大変なんだろ?俺の為になんか無理しないで、ゆっくり休めよ。じゃ。』


「あっ、聡志!」


慌てて呼び掛けたけど、一方的に切られてしまった。


聡志の冷たい物言いが、悲しくて、腹立たしくて、でもそうなってしまうあいつの気持ちもよくわかって・・・今は何を話しても無駄だろうと諦める。


オフィスに戻った私は、改めてニュースを検索して、経緯と試合内容を確認した。


(それにしてもなんで、今日でも、一昨日でもなく、昨日なの?神様は意地悪過ぎるよ・・・。)


私は久しぶりに泣きたくなった。