「キャッ!」


そう悲鳴を上げた人は


「陽菜さん。」


「何やってんだ、こんな所で。」


そう問われた陽菜さんは


「2人共、大変だろうなぁと思って、差し入れを・・・。」


となぜかしどろもどろに言う。


「だいたい、こんな時間にどうやって来たんだ。」


「え、それはそのう・・・あっ、あの後、友達とちょっと飲んじゃって。終電逃しちゃったから、この近くのホテル泊まったのよ。それで、まぁ思いついて・・・。そしたら、なんかお取り込み中だったから、入りそびれてたわけよ。」


あ、今の話、聞かれちゃったんだ・・・。


「平賀さん、あなたも無粋な人だねぇ。こんな時に、由夏口説くなんて、あり得ないよ。だからいつまで経っても独身なんだよ。」


すると突然、平賀さんに矛先を向ける陽菜さんに


「うるさい。30目前にして、男の影も見えない、お前に言われたくない。」


と言い返す平賀さん。


「あっ、由夏聞いた?今の完全にセクハラだよね。訴えるから、その時は証人になってよ。」


「なんだ、お前。夜中にわざわざケンカ売りに来たのか?」


なんかあまり見たことない2人の様子に、私は笑いながら


「まぁまぁ。せっかく陽菜さんが美味しそうなお菓子、持って来て下さったんですから、いただきましょうよ。お茶煎れますよ。」


と言うと


「ううん、いいよ由夏。私が煎れてあげるから、あんたはゆっくりしてな。」


と陽菜さんが言ってくれたので、お言葉に甘えて、席に座るとしまい放しだった携帯を手にする。


まず目に入って来たのは、ポップアップされた悠からのLINEメッセージ。


『おめでとう、由夏。とうとうやったね、塚原くん。4年間の努力は無駄じゃなかった、由夏と塚原くんの為に乾杯!』


意味が分からず、首を捻っていると、同様のメッセージが、加奈や他の友人からも届いている。親からは留守電が・・・。


慌てて、聡志とのLINEを開けてみると、今日、ナイターの試合に投げるとのメッセージが。


「嘘でしょ!」


思わず大きな声を出してしまった私に


「どうしたの?由夏。」


当然、そう尋ねる陽菜さん。


「彼氏が、昨日のナイターの試合で投げたらしくて・・・。」


「えっ、どういうこと?」


「岩武は知らなかったのか?」


「はい。予告先発は違うピッチャーが発表されてましたし、第一、彼は二軍戦の先発予定だったんです、雨で中止になっちゃいましたけど。」


と答える私は、とにかく混乱していた。