とは言っても、それから試合開始までの3時間程の記憶がほとんどない。緊張するなと言う方が、無理だ。
取り敢えずは、他のコーチ陣や選手達への挨拶周り。同期の川上は今日は上がり(登板予定がなく、ベンチ入りしない)で
「エライことになったな。でもビッグチャンスであることは間違いない。今日はテレビの前で、応援してるからな。」
と激励してくれ、俺より一足先に一軍に呼ばれていた菅沼さんは
「今日は俺もスタメンだから、全部俺の所に打たせろ。そしたら、デビュー戦で完全試合(一人のランナーも出さずに完封して勝つ)だ。」
と軽口を叩いて、リラックスさせようとしてくれたし、その他の選手達も、この状況に同情しつつ、励ましてくれた。
本当は相手チームのGにも、松本さんはいるし、監督は大学の大先輩だから、初の一軍昇格でもあり、挨拶に伺わなくてはならないのだろうが、さすがに先発ピッチャーなので、遠慮させてもらう。
その後、ピッチャーの全体練習に参加して、試合に備えて、軽い腹ごしらえをしたのは、流れとしては覚えているけど、細かい内容はほとんど記憶にない。
そして、試合開始30分前に、ブルペンに入る。小谷コーチと、キャッチャーの醍醐さんが待ち構えている。
「よろしくお願いします。」
2人にそう挨拶し、軽く何球か投げたあと、全力投球に切り替える。
「ナイスボール。」
何度か醍醐さんの声が響く。試合前の先発ピッチャーをわざわざ不安にさせるキャッチャーがいるわけはない。俺だって、キャッチャーの時は、そうやって、ピッチャーを鼓舞した。
「久しぶりに見たが、本当にいい球放るな。」
やがて小谷さんが、口を開いた。
「なかなか一軍に呼ばれずに、面白くなかったろうが、腐らず、よくここまで調整して来たな。」
「ありがとうございます。」
「もう俺が言うことは何もない。行って来い!」
「はい。」
頷いてブルペンを出た。いよいよ時は、来た。
ベンチに入り、そしてグラウンドに足を踏み入れる。その瞬間、観客席からは大歓声が巻き起こる。そして、場内アナウンスに送られるように、俺はゆっくりとマウンドに向かう。
眩いばかりのカクテル光線。ビッシリと埋まった観客席。そしてそれぞれのポジションについたレギュラー選手達。
(ついに・・・俺はここに来た。)
今朝起きた時には、予想も出来なかった。しかし、これは夢でも幻ではない、間違いない現実。それも相手はG、不足は何もない。
(さぁ、由夏。行くぜ!)
俺はゆっくりと振りかぶると、醍醐さんのミットに目がけて、ボールを投げ込んだ。
取り敢えずは、他のコーチ陣や選手達への挨拶周り。同期の川上は今日は上がり(登板予定がなく、ベンチ入りしない)で
「エライことになったな。でもビッグチャンスであることは間違いない。今日はテレビの前で、応援してるからな。」
と激励してくれ、俺より一足先に一軍に呼ばれていた菅沼さんは
「今日は俺もスタメンだから、全部俺の所に打たせろ。そしたら、デビュー戦で完全試合(一人のランナーも出さずに完封して勝つ)だ。」
と軽口を叩いて、リラックスさせようとしてくれたし、その他の選手達も、この状況に同情しつつ、励ましてくれた。
本当は相手チームのGにも、松本さんはいるし、監督は大学の大先輩だから、初の一軍昇格でもあり、挨拶に伺わなくてはならないのだろうが、さすがに先発ピッチャーなので、遠慮させてもらう。
その後、ピッチャーの全体練習に参加して、試合に備えて、軽い腹ごしらえをしたのは、流れとしては覚えているけど、細かい内容はほとんど記憶にない。
そして、試合開始30分前に、ブルペンに入る。小谷コーチと、キャッチャーの醍醐さんが待ち構えている。
「よろしくお願いします。」
2人にそう挨拶し、軽く何球か投げたあと、全力投球に切り替える。
「ナイスボール。」
何度か醍醐さんの声が響く。試合前の先発ピッチャーをわざわざ不安にさせるキャッチャーがいるわけはない。俺だって、キャッチャーの時は、そうやって、ピッチャーを鼓舞した。
「久しぶりに見たが、本当にいい球放るな。」
やがて小谷さんが、口を開いた。
「なかなか一軍に呼ばれずに、面白くなかったろうが、腐らず、よくここまで調整して来たな。」
「ありがとうございます。」
「もう俺が言うことは何もない。行って来い!」
「はい。」
頷いてブルペンを出た。いよいよ時は、来た。
ベンチに入り、そしてグラウンドに足を踏み入れる。その瞬間、観客席からは大歓声が巻き起こる。そして、場内アナウンスに送られるように、俺はゆっくりとマウンドに向かう。
眩いばかりのカクテル光線。ビッシリと埋まった観客席。そしてそれぞれのポジションについたレギュラー選手達。
(ついに・・・俺はここに来た。)
今朝起きた時には、予想も出来なかった。しかし、これは夢でも幻ではない、間違いない現実。それも相手はG、不足は何もない。
(さぁ、由夏。行くぜ!)
俺はゆっくりと振りかぶると、醍醐さんのミットに目がけて、ボールを投げ込んだ。