渡辺さんが仕上げてくれたサンプルが届いたのは、翌日の夕方。ノムが受け取って来てくれた包みをドキドキしながら、開ける。


「うわぁ。」


「いいじゃない。」


「素敵じゃないですか。」


私が広げたサンプルを見て、美優が、岡嶋さんが、そして希が声を上げる。


「渡辺さんも、シンプルだけど、落ち着いてて、スーパーの制服としては、申し分ないんじゃないかって、おっしゃってました。」


とノム。


「進藤。」


「はい。」


そんなみんなの反応を見て、平賀さんが美優に声を掛けた。


「すまないが、着てみてくれないか。」


「えっ、私がですか?」


「ああ。モデル、やってくれ。その方が、やっぱりイメージが湧く。」


「はい!」


嬉しそうに頷いた美優は


「じゃ由夏、借りるよ。」


と言って、私からサンプルを受け取る。


「よろしくね。」


「うん。」


そうして部屋を出て行ってから、約10分後、戻って来た美優を見たみんなは


「美優さん、なんか凄くカッコいいです。」


「なんか出来る店員って感じじゃない?」


「えへへ、そうですか?」


そんな会話が交わされてる横で、私は考えてる。


「どうしたの?由夏。」


そんな私に気付いた陽菜さんが、声を掛けて来る。


「なにか足りない気が・・・。」


と私。


「足りない?」


「はい。確かに色目を一色にしたのは、スッキリしたんですけど、やっぱりなにかスッキリし過ぎてしまった気が・・・。」


「でも市販される服じゃなくて、制服なんだから。これでいいんじゃない?」


「はい・・・。」


陽菜さんは、そう言ってくれるけど、私は肯けない。


「よくありませんって、顔だな。岩武。」


そんな私に、平賀さんが言う。


「すみません。」


そう言った私は、一瞬躊躇ったあと、平賀さんに頼んだ。


「平賀さん、あと1日あります。もう一考、させていただけませんか?」


「間に合う?」


心配そうな陽菜さんに


「わかりません。でももうひと工夫出来るような気がします。後悔したくないんです。」


これが最後ですから、その言葉は飲み込んだけど、陽菜さんには伝わったみたいで


「平賀さん。」


と援護射撃をしてくれるように平賀さんを見た。


「いいだろう。俺達ももう少し考えてみよう。」


「ありがとうございます。」


私は頭を下げた。