開幕戦2日前。この日は、一軍に登録される選手が、リーグから一斉に発表される。
仙台スタジアムで行われている、開幕に備えての一軍メンバーによる全体練習。しかし、その中に俺の姿はなかった。
前日の練習後、俺は小谷コーチに呼ばれた。
「なんですか?コーチ。」
そう尋ねた俺に、厳しい表情を浮かべた小谷さんは、躊躇ったかのように、一瞬視線を外したが、すぐに口を開いた。
「聡志・・・明日から、二軍に合流しろ。」
「えっ?」
耳を疑った、というより、小谷さんの言葉が理解出来なかった。ポカンとコーチの顔を見た俺は、次に思わず
「ちょっと、からかわないで下さいよ。」
と言ってしまっていた。しかし、小谷さんは表情を変えず
「冗談言ってる場合か。スタッフミーティングの結果、現在一軍に帯同しているメンバーのうち、お前と黒岩、田中、宇野、菅沼の5名は開幕登録メンバーから外れることになった。」
と告げた。その言葉に、一瞬頭が真っ白になった俺は、次に
「そんなバカな!」
と思わず叫んでいた。
「お前、一軍に入れると思ってたのか?」
そんな俺に、冷静に小谷コーチは言う。その言葉に、一瞬ハッとして、言葉を失ったけど
「はい。」
と俺は答えていた。自惚れるな、とでも言われると思って、待ち構えていると、小谷さんは、フッと表情を緩めて
「そりゃ、そうだわな。」
と言った。
「お前は結果を残した。チーム事情で、最後の方は先発させてやれなくてすまなかったが、それでもお前はリリーバーとしての適性を俺達に示してくれた。」
「・・・。」
「今のお前は、十分一軍の戦力になれる。俺はそう思ってる。スタッフミーティングでも、お前を一軍に残すべきとの意見の方が強かった。だが・・・野崎監督は違った。」
「?!」
「監督はこう言った。『塚原は先発として使う。いや、先発としてしか使わない。』と。」
どういう意味なんだ・・・監督の真意が分からず、俺は反駁の言葉も出せない。
「『塚原は佐々木、川上に並ぶ先発の柱になれる。なってもらわなきゃ困るんや。だが、今はあと一歩力が足りない。なら、当面はリリーフとして戦力にするという考え方もあるだろうが、俺は塚原の可能性を便利使いするつもりはない。』わかるか?監督はお前に惚れ込んでる。3年前の秋季キャンプでの、あのピッチングを見た時から。お前をチームを、いや球界を代表するくらいの先発ピッチャーになれる器だと見込んだんだ。」
「・・・。」
「『だから、俺が塚原を呼ぶ時は、先発としてしか呼ばん。二軍でも、絶対に先発以外で起用せんように、前田に指示を出しておく。そう遠くない時期に、奴が必要になる時は必ず来る。それまでは、二軍で鍛錬させる。』これが監督の結論だ。そして、俺も・・・それに納得した。」
「小谷さん・・・。」
「これを聞いてお前がどう感じて、どう行動するのか。ふざけるなと不貞寝をするのか、よし、それなら明日にでも呼ばせて見せると発奮するのか。それはお前が決めることだ。俺はピッチングコーチだ、お前のメンタルまで指導は出来ん。今の俺に言えることはただ1つ。自分と監督を信じろ、それだけだ。」
そう言い残すと、小谷さんは、俺に背を向けた。
仙台スタジアムで行われている、開幕に備えての一軍メンバーによる全体練習。しかし、その中に俺の姿はなかった。
前日の練習後、俺は小谷コーチに呼ばれた。
「なんですか?コーチ。」
そう尋ねた俺に、厳しい表情を浮かべた小谷さんは、躊躇ったかのように、一瞬視線を外したが、すぐに口を開いた。
「聡志・・・明日から、二軍に合流しろ。」
「えっ?」
耳を疑った、というより、小谷さんの言葉が理解出来なかった。ポカンとコーチの顔を見た俺は、次に思わず
「ちょっと、からかわないで下さいよ。」
と言ってしまっていた。しかし、小谷さんは表情を変えず
「冗談言ってる場合か。スタッフミーティングの結果、現在一軍に帯同しているメンバーのうち、お前と黒岩、田中、宇野、菅沼の5名は開幕登録メンバーから外れることになった。」
と告げた。その言葉に、一瞬頭が真っ白になった俺は、次に
「そんなバカな!」
と思わず叫んでいた。
「お前、一軍に入れると思ってたのか?」
そんな俺に、冷静に小谷コーチは言う。その言葉に、一瞬ハッとして、言葉を失ったけど
「はい。」
と俺は答えていた。自惚れるな、とでも言われると思って、待ち構えていると、小谷さんは、フッと表情を緩めて
「そりゃ、そうだわな。」
と言った。
「お前は結果を残した。チーム事情で、最後の方は先発させてやれなくてすまなかったが、それでもお前はリリーバーとしての適性を俺達に示してくれた。」
「・・・。」
「今のお前は、十分一軍の戦力になれる。俺はそう思ってる。スタッフミーティングでも、お前を一軍に残すべきとの意見の方が強かった。だが・・・野崎監督は違った。」
「?!」
「監督はこう言った。『塚原は先発として使う。いや、先発としてしか使わない。』と。」
どういう意味なんだ・・・監督の真意が分からず、俺は反駁の言葉も出せない。
「『塚原は佐々木、川上に並ぶ先発の柱になれる。なってもらわなきゃ困るんや。だが、今はあと一歩力が足りない。なら、当面はリリーフとして戦力にするという考え方もあるだろうが、俺は塚原の可能性を便利使いするつもりはない。』わかるか?監督はお前に惚れ込んでる。3年前の秋季キャンプでの、あのピッチングを見た時から。お前をチームを、いや球界を代表するくらいの先発ピッチャーになれる器だと見込んだんだ。」
「・・・。」
「『だから、俺が塚原を呼ぶ時は、先発としてしか呼ばん。二軍でも、絶対に先発以外で起用せんように、前田に指示を出しておく。そう遠くない時期に、奴が必要になる時は必ず来る。それまでは、二軍で鍛錬させる。』これが監督の結論だ。そして、俺も・・・それに納得した。」
「小谷さん・・・。」
「これを聞いてお前がどう感じて、どう行動するのか。ふざけるなと不貞寝をするのか、よし、それなら明日にでも呼ばせて見せると発奮するのか。それはお前が決めることだ。俺はピッチングコーチだ、お前のメンタルまで指導は出来ん。今の俺に言えることはただ1つ。自分と監督を信じろ、それだけだ。」
そう言い残すと、小谷さんは、俺に背を向けた。