各デザイナーによるプレゼンが終わり、あとは結果を待つばかりの状況になっていた我が社は、混乱に陥っていた。
私に話した通り、並木さんが辞表を提出したのに続いて、何人かのデザイナーが退職届を出したのだ。
退職を考えているのは、私だけじゃない、並木さんの言葉はウソではなかった。タイミングもプレゼンが終わった段階で、これで責任は果たしたということで、考えることはみんな同じだった。
結局、10人在籍していたJFCのデザイナーの実に半数の5名が、会社を去ることになってしまった。
平賀さんは、必死に各人の慰留に努めたけど、やはりみなさん、次の渡りは当然つけているわけで、その説得に応じる人は1人もいなかった。
更にデザイナーだけでなく、ベテランパタンナーの渡辺さんもフリーでやって行きたいと退職届を提出。かくして、JFCは会社存亡の危機と言っても言い過ぎではない状況に立たされることになってしまった。
そんな最中に届いたプレゼンの結果は、私のデザインは5点全て採用になったが、他のデザイナーさんの採用率はまちまちで、結局全体としては、6割強というところだったが
「6割という採用率がいいのか、悪いのか、俄かには判断はつかん。今までは10割だったんだから、それに比べれば落っこちてるのは、間違いないし、一方競争に6割が勝ち抜いたと考えれば、決して悲観する数字じゃないのかもしれない。だが、所属デザイナーが半減してしまう以上、このままでは、今までのように各世代すべてのデザインに、万遍なく対応することは出来なくなる。つまり、プレゼンに参加も出来ずに、不戦敗が増えると言うことだ。これは厳しい・・・。」
苦悩の色を浮かべて、そう言う平賀さんを目の前にして、実は私も・・・とは、とても言い出せる状況ではなかった。
そんな会社の状況を、素直に話し、週末の沖縄行きをキャンセルせざるを得ないだけではなく、退職、つまり仙台行きも当面延期するしかないと告げる私の言葉を、電話越しで聡志は黙って聞いていた。
流れる沈黙・・・重苦しい空気が、携帯越しに伝わって来る。それに耐えきれなくなって
「聡志、本当にごめんなさい。」
そう言って、私は携帯を持ったまま、沖縄に向かって頭を下げる。
『よせよ、お前が謝る話じゃないじゃんか。仕方ねぇよ。』
ようやく聞こえてくる聡志の声。
『大変だなぁ。お前、あんまり無理して、身体壊すなよ。由夏が1人で背負わなきゃいけないわけでもないんだからさ。』
「うん・・・。」
『せっかくの試合、見てもらえないのは、残念だけど、絶対にいいピッチングをするから。応援よろしくな。』
「うん、それはもちろん。」
明るい声で、そう言ってくれたが、内心の落胆を懸命に取り繕うとしてるのは、明白で、せっかくの久しぶりの直接通話も、これ以降は会話も弾まず、私達は間もなく電話を切った。
(ごめんね、聡志・・・。)
私はもう一度、沖縄の空に向かって、心の中で、そう呟いていた。
私に話した通り、並木さんが辞表を提出したのに続いて、何人かのデザイナーが退職届を出したのだ。
退職を考えているのは、私だけじゃない、並木さんの言葉はウソではなかった。タイミングもプレゼンが終わった段階で、これで責任は果たしたということで、考えることはみんな同じだった。
結局、10人在籍していたJFCのデザイナーの実に半数の5名が、会社を去ることになってしまった。
平賀さんは、必死に各人の慰留に努めたけど、やはりみなさん、次の渡りは当然つけているわけで、その説得に応じる人は1人もいなかった。
更にデザイナーだけでなく、ベテランパタンナーの渡辺さんもフリーでやって行きたいと退職届を提出。かくして、JFCは会社存亡の危機と言っても言い過ぎではない状況に立たされることになってしまった。
そんな最中に届いたプレゼンの結果は、私のデザインは5点全て採用になったが、他のデザイナーさんの採用率はまちまちで、結局全体としては、6割強というところだったが
「6割という採用率がいいのか、悪いのか、俄かには判断はつかん。今までは10割だったんだから、それに比べれば落っこちてるのは、間違いないし、一方競争に6割が勝ち抜いたと考えれば、決して悲観する数字じゃないのかもしれない。だが、所属デザイナーが半減してしまう以上、このままでは、今までのように各世代すべてのデザインに、万遍なく対応することは出来なくなる。つまり、プレゼンに参加も出来ずに、不戦敗が増えると言うことだ。これは厳しい・・・。」
苦悩の色を浮かべて、そう言う平賀さんを目の前にして、実は私も・・・とは、とても言い出せる状況ではなかった。
そんな会社の状況を、素直に話し、週末の沖縄行きをキャンセルせざるを得ないだけではなく、退職、つまり仙台行きも当面延期するしかないと告げる私の言葉を、電話越しで聡志は黙って聞いていた。
流れる沈黙・・・重苦しい空気が、携帯越しに伝わって来る。それに耐えきれなくなって
「聡志、本当にごめんなさい。」
そう言って、私は携帯を持ったまま、沖縄に向かって頭を下げる。
『よせよ、お前が謝る話じゃないじゃんか。仕方ねぇよ。』
ようやく聞こえてくる聡志の声。
『大変だなぁ。お前、あんまり無理して、身体壊すなよ。由夏が1人で背負わなきゃいけないわけでもないんだからさ。』
「うん・・・。」
『せっかくの試合、見てもらえないのは、残念だけど、絶対にいいピッチングをするから。応援よろしくな。』
「うん、それはもちろん。」
明るい声で、そう言ってくれたが、内心の落胆を懸命に取り繕うとしてるのは、明白で、せっかくの久しぶりの直接通話も、これ以降は会話も弾まず、私達は間もなく電話を切った。
(ごめんね、聡志・・・。)
私はもう一度、沖縄の空に向かって、心の中で、そう呟いていた。