「ねぇ、どうなっちゃうのかな?ウチの会社。」


その夜、同期3人に希を加えた若手4人で、飲みに行った。そして、話題は当然、今朝の衝撃発表のことになる。


「当然厳しくなるよ。だって若干の外の仕事はあるけど、ウチはあくまで本社の商品のデザインを独占受注して、成り立ってる会社なんだから。」


美優の問いに答えた私の言葉に、みんなの顔は暗くなる。


「本社からの風当たりを実際に受けてたのは、平賀さんだよ。だから平賀さんは、みんなに必死に警告して来たんだ。このままじゃヤバいって。でもそれを柳に風と聞き流して、のほほんとしてたのは、今朝、平賀さんを吊るし上げてた古手のデザイナー連中じゃねぇか。俺はふざけんなって言葉が、喉元まで、出かかったよ。」


平賀さんの直属の部下として、経緯をそれなりに見聞きしているノムは憤る。


「で、実際これからどうなって行くんですか?」


入社1年目で、こんな騒動に直面した希は、不安いっぱいといった表情で聞いてくる。


「これは平賀さんが言ってたんだけど、契約は来年の3月までだから、本来なら来季の秋冬物のデザインはウチが今まで通りに独占でやれるはずなんだけど、実際にはもうそうはならないだろうって。もっとも、のほほんとしてたのは、本社のバイヤーも同じで、急に新たな取引先探せなんて言われても、何のツテもない連中がほとんどだからな。今ヒーヒー言いながら、駆け回ってるけど、どれだけの会社が揃うか、疑問だな。」


「ううん、そんなことないよ。デザイナーの世界では、独立独歩でやってる事務所なんて、山ほどあるんだから。ウチの親会社に声掛けられたら、大抵のところは二つ返事だよ。玉石混交かもしれないけど、取り敢えず、数なんて、すぐに揃うと思う。」


ノムの言葉に、私が反論すると、また座が沈む。


「じゃ、本当にどうなっちゃうの?ウチの会社。」


不安そうに言う美優に


「まずは、岩武達に頑張って貰うしかないよ。それに俺達も、外の取引先を開拓する為に、頑張るから。」


となだめるようにノムが答える。


「でも、由夏や希には悪いけど、ウチの会社のデザイン力って、本社に見捨てられちゃうくらいのレベルなんでしょ?そんなにうまく行くわけないじゃない。」


「おい、進藤・・・。」


この美優の言い草には、ノムは慌ててるけど


「あ〜ぁ、この齢で失業者になっちゃったらどうしよう。この不景気に仕事なんてなかなかないよ。でもその点、由夏はいいよね。」


「えっ?」


「だって、未来の旦那様が仙台で待ってるんだもん。何の心配もないじゃない。そっか・・・永久就職も悪くないよね。私、明日から婚活しようかな。」


と悪びれもなく言う美優に、ノムは複雑な表情を浮かべ、私と希は思わず顔を見合わせてしまっていた。