それから俺達は、息つく暇もなく、宮崎に移動。各球団合同秋季教育リーグが毎年行われているこの地は、また二軍の日本一を決める選手権が行われる場所でもある。


一軍と違い、12球団を東西に分けている二軍。今年は、イースタンリーグ優勝のEとウェスタンリーグ優勝のHが、一発勝負で雌雄を決することになった。


一軍は同リーグに所属する両チーム。今季の激戦を制したのはH。そのリベンジマッチの面もあるし、親会社が同業で、そのライバル意識も強い。CSで全国中継されることもあり、注文度は高かったし、現場も盛り上がっていた。


「いよいよラストマッチだ。当たり前だが勝ちに行く。いいな!」


試合前の監督の檄に応えて、俺達はグラウンドに散った。


試合は、こちらの先発が早々に打ち込まれ、相手に主導権を握られる。だが、小刻みにピッチャーを変え、懸命な防戦に努めて、追加点を阻んでいる間に、こちらも反撃し、ついに8回に同点に追い付いた。


9回は両者譲らず、試合は延長戦に。


「この試合は、延長打ち切りはない。決着が付くまで、何イニングでもやる。ここまで来たら、精神力の勝負だ。気を抜くなよ。」


(もちろん、望むところだ。)


初回からフル出場の俺も、気力はまだまだ充分だった。


延長戦に入り、両チームともチャンスを迎えるが、決定打が出ないまま、試合は12回まで進む。普段の試合なら、ここで打ち切り、引き分けだが、さっきの監督の言葉通り、今日は決着が付くまで試合は続く。


そして未知の世界に入った延長13回、Eは2点を挙げ、ついにこの試合で、初めてリードした。後は相手の最後の攻撃を抑えれば、二軍とは言え、俺達のチームは日本一になる。


「最終回だ、どうせならバリバリに力んで行け。いいな!」


マウンド上に集まった俺達に、小谷ピッチングコーチは、そう告げて、ベンチに下がった。


「と言うことで、あと3人、とっとと片付けて、旨い酒、思いっきり飲もうぜ。」


「ああ。」


そうピッチャーに声を掛けて、俺もキャッチャーボックスに座った。


初球、いいコースに決まったと思われたが、鋭いスイングに弾き返された打球がなんと、ピッチャーの右膝を直撃。内野安打となってしまった。


「大丈夫か!」


俺達は慌てて、ピッチャーに駆け寄り、ベンチからも小谷さんが飛び出して来る。


「大丈夫だ。」


そう言って、気丈に立ち上がったが、やはり激痛に、すぐに崩れ落ちるピッチャー。


「担架だ!」


小谷さんがベンチに向かって叫び、グラウンドは緊迫感に包まれる。