その後も美味しいお料理と、楽しいお喋りを楽しんだ私達。


「そう言えば。」


と思い出したように、奥さんが聡志に


「この前、菅沼くんが新しい彼女連れて来たよ。」


と言った。すると


「そ、そうですか。」


となぜか、やや焦ったように答える聡志。


「綺麗なお嬢さんだったけど、彼もなかなか落ち着かない男だから。今度はちゃんとお付き合いしなさいよって言ってやったら『わかってます。』って言ってたけど、どうなることやら。」


そう言い残して、奥さんも奥に引っ込んで行ったから


「菅沼選手って、前に加奈を紹介しろって、聡志に言って来た人じゃなかったっけ。」


その名前に聞き覚えのあった私は、聡志に問い掛ける。


「お前、よく覚えてたな。」


と驚く聡志に


「なに、その人、女たらしなの?」


とツッコミを入れる。


「え、ま、まぁ・・・。」


歯切れの悪い返事の聡志。


「奥さんは、その人に好意持ってないんだね、きっと。そうじゃなきゃ、彼女連れて来てる時に、わざわざあんなこと言わないよ。」


「そんな悪い人じゃないんだけど・・・。」


「とにかく、浮気とか不倫とか、そういうことする奴って、最低だよ。その彼女さんに同情するな、私。」


「いや、今はその人、別の女はいないみたいだし。」


「今はいなくても、そのうち、きっとやるよ。そういう奴はさ、病気なんだから、治らないんだよ。」


「由夏、なに興奮してんだよ。」


と困惑しながら聞いてくる聡志に


「加奈のこと、思い出して、また腹がたってきたの。沖田くんのこと、誤解した挙げ句、あんな男に引っ掛かってさ。」


この前、加奈は沖田くんにも好きな人が別にいたとか言ってたけど、それはとんでもない誤解だったことがわかった。それがわかってから、加奈の軽率さに余計腹がたって、仕方ないんだ。


「さすがに沖田もだいぶ落ち込んでたからなぁ。」


沖田くんと電話で話した聡志も、ポツンとそんなことを言うから、私の怒りは、余計にヒートアップしてしまっていた。