でも、この人の女性関係の噂は、あまり芳しくないものが多く、俺を含め、その愚痴を聞いた連中はみな、自業自得でしょと内心思っていた。
そんな人が、長谷川に目を付けたのを知って、実はマズいなとは思っていたのだが、俺の知り合いであることがバレてしまったのは、本当にマズかった。
長谷川の接近ぶりに、少し困惑していた俺だが、と言って、あんまりいい加減な奴を紹介して、彼女に迷惑を掛けるのは、もちろん本意ではない。
俺はなんとか、のらりくらりとかわそうとしたのだが、相手が先輩ということもあり、とうとう押し切られ
「彼女に話はしますが、無理強いは出来ませんからね。」
と言ってしまうと
「おぅ、それはわかってるさ。でも、ま、ひとつ、ツカの押しで、よろしく頼むよ。」
とニヤニヤしながら、言われてしまった。
飯を奢ると言われたが、変に恩義を被りたくないから、懸命に断り、俺は家に戻ると、長谷川に連絡を入れた。
『もしもし、お疲れ様〜。どうしたの?塚原くんの方から、連絡くれるなんて珍しい。でも嬉しい。』
電話越しの長谷川の声は弾んでいる。
「ああ。あのさ・・・いきなり、こんなこと聞いて、すまないんだけど・・・長谷川って、今付き合っている人とかいる?」
『エ〜、本当にいきなりだね。一体どうしたの?急に私に興味が湧いた?』
「いや、その・・・。」
『そんなわけないか。』
言い澱む俺に、笑いながらそう返した後
『お陰様で、塚原くんとは違って、なんの後ろ髪を引かれることもなく、仙台に着任しました。つまり、完全フリーで〜す。』
とおどけたように答える長谷川。そんな彼女の口調に、ふと違和感を覚えるけど、今はそこを考える場合じゃない。
「実は、俺の先輩がさ、その・・・スタンドにいる長谷川のことを、見初めたみたいなんだ。」
『えっ?』
俺のその言葉に、長谷川が急に息を呑んだのが感じられる。
「もしよかったら、1度会ってみてくんねぇかなって思ってさ。」
俺がそう言うと、完全に沈黙する長谷川。これはマズい展開か・・・俺が戸惑っていると
『あの・・・それって、今日試合に出てた人?』
と長谷川が聞いて来る。
「ああ、菅沼さんって言うんだけど・・・。」
『えっ、菅沼選手って、一軍の試合にもよく出てるよね?』
「ああ。今は調整で二軍にいるんだけど。」
『ホントに?信じられない。あの菅沼選手が私を?凄く光栄です。塚原くん、是非よろしくお願いします!』
それは予想以上の好反応だった。お陰で俺は、菅沼さんの少々難ありの事実を、長谷川に切り出しそびれてしまった。
そんな人が、長谷川に目を付けたのを知って、実はマズいなとは思っていたのだが、俺の知り合いであることがバレてしまったのは、本当にマズかった。
長谷川の接近ぶりに、少し困惑していた俺だが、と言って、あんまりいい加減な奴を紹介して、彼女に迷惑を掛けるのは、もちろん本意ではない。
俺はなんとか、のらりくらりとかわそうとしたのだが、相手が先輩ということもあり、とうとう押し切られ
「彼女に話はしますが、無理強いは出来ませんからね。」
と言ってしまうと
「おぅ、それはわかってるさ。でも、ま、ひとつ、ツカの押しで、よろしく頼むよ。」
とニヤニヤしながら、言われてしまった。
飯を奢ると言われたが、変に恩義を被りたくないから、懸命に断り、俺は家に戻ると、長谷川に連絡を入れた。
『もしもし、お疲れ様〜。どうしたの?塚原くんの方から、連絡くれるなんて珍しい。でも嬉しい。』
電話越しの長谷川の声は弾んでいる。
「ああ。あのさ・・・いきなり、こんなこと聞いて、すまないんだけど・・・長谷川って、今付き合っている人とかいる?」
『エ〜、本当にいきなりだね。一体どうしたの?急に私に興味が湧いた?』
「いや、その・・・。」
『そんなわけないか。』
言い澱む俺に、笑いながらそう返した後
『お陰様で、塚原くんとは違って、なんの後ろ髪を引かれることもなく、仙台に着任しました。つまり、完全フリーで〜す。』
とおどけたように答える長谷川。そんな彼女の口調に、ふと違和感を覚えるけど、今はそこを考える場合じゃない。
「実は、俺の先輩がさ、その・・・スタンドにいる長谷川のことを、見初めたみたいなんだ。」
『えっ?』
俺のその言葉に、長谷川が急に息を呑んだのが感じられる。
「もしよかったら、1度会ってみてくんねぇかなって思ってさ。」
俺がそう言うと、完全に沈黙する長谷川。これはマズい展開か・・・俺が戸惑っていると
『あの・・・それって、今日試合に出てた人?』
と長谷川が聞いて来る。
「ああ、菅沼さんって言うんだけど・・・。」
『えっ、菅沼選手って、一軍の試合にもよく出てるよね?』
「ああ。今は調整で二軍にいるんだけど。」
『ホントに?信じられない。あの菅沼選手が私を?凄く光栄です。塚原くん、是非よろしくお願いします!』
それは予想以上の好反応だった。お陰で俺は、菅沼さんの少々難ありの事実を、長谷川に切り出しそびれてしまった。