その夜、私は久しぶりに聡志に電話をした。このところ、仕事がバタバタしていて、LINEのやり取りばかりになっていて、それも滞りがちだった。


『もしもし、お疲れ。』


聞こえて来た声が元気なことに、まずはホッとする。


「うん、聡志もお疲れ。ゴメンね、最近忙しくて。」


『大丈夫。仕事が忙しいのは結構なことじゃねぇか。』


「でも聡志の成績は、ちゃんとチェックしてるよ。今日は4打数2安打、盗塁も2つ刺して、チームを勝利に導く好リード。ナイス!」


『お陰さんで、調子はいい。でも相変わらず、上からはお呼びが掛からなくてな。』


と苦笑混じりに言う聡志に


「仕方ないよ。でも、絶対にチャンスは来るから。腐っちゃダメだよ。」


と励ます。


『わかってる。腐るつもりはねぇけど、でも焦るのは確かだな。みんな、一軍で結果出してるからな。』


みんなと言うのは、高校大学で、一緒にやったかつてのチームメイト達。松本先輩を筆頭に、確かに活躍してる人は何人もいる。


「そうだねぇ・・・。」


『船橋なんか、こないだの試合で、大澤を滅多打ちにしてたからな。容赦ねぇな、お前ってメールしたら、「当たり前だ。次はお前の番だ。いつまで二軍に逃げ込んでるんだ、卑怯者め。」って返してきやがって。全くいい友達を持ったよ。』


なんて言うから、思わず笑ってしまった。


「ところで、今度のお盆の新幹線の切符取れたから。よろしくね。」


『本当?そりゃよかった。待ってるからな。何泊出来るんだ?』


「聡志が仙台にいる4日間はずっと居られる、というか絶対に居る。」


『サンキュー、力湧いてくるな。あっ、そうだ。GWになんで、由夏を連れてこなかったんだって、この前、堀岡さんに散々怒られたから、今回は予約入れとく。』


「うん、ありがとう。あっ、でもお店、お盆休みじゃないの?」


『変な遠慮したら、今後出入り禁止にするって。』


そこまで言ってもらえるなんて、ありがたいな。


『でもさ、もし一軍に上がってたら、その時は福岡遠征になっちまうから、会えないぜ。』


「えっ、そうか。それは困るな。」


『バカ。困らないで喜べ。』


「冗談だよ。」


そんなことを話しながら、楽しい時間を過ごした私達。


だから、私には、思いもよらなかった。聡志が私に隠し事をしているなんて・・・。