「何、考えてるの!」
私は思わず、そう叫ぶように言っていた。
展示会から数日後の週末、私は定例会で悠と加奈に会っていた。3人が揃うのは、お正月以来。悠の家や家の近くでということはあったけど、外の定例会で揃ったのは、悠が最初の出産をして以来初めてだから、ほぼ2年ぶりだった。
聡志との時間と同じくらい大切な、親友2人との時間。楽しみにして来たのに、2人に報告があると、加奈がとんでもないことを言いだした。
なんと付き合い始めた沖田くんと別れたというのだ。他に好きな人が出来たと、俯き加減に私達に告げる加奈に、悠は言葉を失っていたけど、私は嫌な予感がして
「で、どういう人なの?」
と聞くと
「うん・・・由夏がたぶん想像している人・・・。」
と答えるから
「ええ!」
と悲鳴に近い声を上げてしまった。
時は3ヶ月ほど、遡る。その日は加奈と2人での定例会で、加奈は職場の先輩の奥さんが、4歳の娘さんを残して失踪してしまったという話をして来た。そのドラマのような話を、私も興味津々に聞いたのだけど、ふと気になって、こう言った。
「ねぇ、加奈。念の為、言っとくけど、絶対に深入りしちゃだめだからね。」
その先輩は、加奈の入省時の指導官で、その人にほのかな思いを加奈が抱いていることは、以前からその人のことを話す時の態度で、察していた。
もちろんこの時点では、既婚者相手に、どうこうするつもりが加奈にないことは、わかっていたけど、思わぬ事態に加奈が情にほだされるようなことがあってはならないと、釘を刺したつもりだった。
ところがまんまと、加奈がその危惧通りの状況にはまってしまったことに慌て、そして怒りを感じて、思わず怒声に近い言葉を投げつけてしまったのだ。
「生半可な気持ちで関わったら、大変なことになるって、この前言ったよね?」
「生半可な気持ちじゃない、本気だもん。それに、沖田くんにも他に好きな人がいたんだから、仕方ないじゃない!」
その加奈の言葉に、一瞬言葉を失ったけど、沖田くんのことはともかく、加奈がしようとしてるのは、まさしく不倫。それも相手のパ-トナ-が失踪してしまっているといういわくつき。
ロクな結末を迎えられるはずもなく、結婚願望がやたら高まっていたのは知ってたけど、こんな泥沼に自らはまって行くなんて・・・。悲劇的な未来が、あまりにも簡単に予見出来て、私は懸命に彼女の目を覚まそうとするけど、恋は盲目状態の加奈には届かない。ついに
「悠、ごめん。久しぶりに会えたんだけど、私、これ以上、こんな自爆テロ志願者のような人の顔を見たくない。」
と暴言に近い言葉を残して、私は店を飛び出した。
なんでこんな簡単なことがわからないんだろう。私は加奈に腹が立って仕方なかった。
私は思わず、そう叫ぶように言っていた。
展示会から数日後の週末、私は定例会で悠と加奈に会っていた。3人が揃うのは、お正月以来。悠の家や家の近くでということはあったけど、外の定例会で揃ったのは、悠が最初の出産をして以来初めてだから、ほぼ2年ぶりだった。
聡志との時間と同じくらい大切な、親友2人との時間。楽しみにして来たのに、2人に報告があると、加奈がとんでもないことを言いだした。
なんと付き合い始めた沖田くんと別れたというのだ。他に好きな人が出来たと、俯き加減に私達に告げる加奈に、悠は言葉を失っていたけど、私は嫌な予感がして
「で、どういう人なの?」
と聞くと
「うん・・・由夏がたぶん想像している人・・・。」
と答えるから
「ええ!」
と悲鳴に近い声を上げてしまった。
時は3ヶ月ほど、遡る。その日は加奈と2人での定例会で、加奈は職場の先輩の奥さんが、4歳の娘さんを残して失踪してしまったという話をして来た。そのドラマのような話を、私も興味津々に聞いたのだけど、ふと気になって、こう言った。
「ねぇ、加奈。念の為、言っとくけど、絶対に深入りしちゃだめだからね。」
その先輩は、加奈の入省時の指導官で、その人にほのかな思いを加奈が抱いていることは、以前からその人のことを話す時の態度で、察していた。
もちろんこの時点では、既婚者相手に、どうこうするつもりが加奈にないことは、わかっていたけど、思わぬ事態に加奈が情にほだされるようなことがあってはならないと、釘を刺したつもりだった。
ところがまんまと、加奈がその危惧通りの状況にはまってしまったことに慌て、そして怒りを感じて、思わず怒声に近い言葉を投げつけてしまったのだ。
「生半可な気持ちで関わったら、大変なことになるって、この前言ったよね?」
「生半可な気持ちじゃない、本気だもん。それに、沖田くんにも他に好きな人がいたんだから、仕方ないじゃない!」
その加奈の言葉に、一瞬言葉を失ったけど、沖田くんのことはともかく、加奈がしようとしてるのは、まさしく不倫。それも相手のパ-トナ-が失踪してしまっているといういわくつき。
ロクな結末を迎えられるはずもなく、結婚願望がやたら高まっていたのは知ってたけど、こんな泥沼に自らはまって行くなんて・・・。悲劇的な未来が、あまりにも簡単に予見出来て、私は懸命に彼女の目を覚まそうとするけど、恋は盲目状態の加奈には届かない。ついに
「悠、ごめん。久しぶりに会えたんだけど、私、これ以上、こんな自爆テロ志願者のような人の顔を見たくない。」
と暴言に近い言葉を残して、私は店を飛び出した。
なんでこんな簡単なことがわからないんだろう。私は加奈に腹が立って仕方なかった。