それからの時間は、あっという間だったような気がする。


朝食が終わった後は、昨日の後片付けの続きをして、お昼は外食しようという聡志に


「ダメ。昨日の夜、あんな美味しいご飯食べに行ったばかりじゃん。それに普段は、どうせコンビニ弁当ばっかなんでしょ。」


と釘を刺して、朝に続いて手料理を振舞った。といっても、そんな手の込んだものじゃないけど。


そして、あとは2人でまったりと。TVを見て、他愛のない話をして・・・一緒に居られる時間を目一杯楽しんだ。そうこうしているうちに、陽は傾き、やがて夜の帳が降りて来て・・・私が、仙台を離れなければならない時間になってしまった。


「ごめんな。せっかく来てくれたのに、ほとんどどこにも連れてってやれなくて。ただ俺の世話の焼いてもらっただけになっちまったな。」


新幹線のホームまで、見送りに来てくれた聡志が済まなそうに言うけど


「いいんだよ、今回は最初からそのつもりで来たんだから。それに・・・聡志と2日間、ずっと一緒に居られた。この時間が、私には何よりも大切で、嬉しい時間だから。」


そう答えて、私は聡志を見つめる。


「お、おぅ、そうか・・・ありがとうな。」


それに対して、聡志は照れ臭そうに笑うと、一瞬私から視線を外す。そして、ガサゴソとなにやらポケットを探っていたかと思うと


「由夏、これ。」


何やら私に差し出して来る。なんだろうと思って見ると・・・合鍵だ。


「聡志・・・。」


受け取りながら、改めて聡志の顔を見ると


「本当に無理はしなくていいぜ。仕事忙しいの、分かってるし。でも来られる時は・・・待ってるから。」  


と私の顔をちゃんと見ないで、そんなことを言って来る。2人きりの時は大胆なこともするくせに、ホントに照れ屋なんだから・・・。


「ありがと。じゃ、お言葉に甘えて、いっぱい来るから。交通費よろしくね。」


そういたずらっぽく言ってやると


「ちゃっかりしてんな。」


と一瞬苦笑いを浮かべたけど


「そんなの、お安い御用だ。毎週でもドンと来いだ。」


と言うとニカッと笑う。その笑顔に私の胸はキュンとする。


そして新幹線が静かにホ-ムに滑り込んでくる。寂しいけど、またしばしのお別れだ。


「じゃ、明日からまた頑張ってね。」


「お前も。春服、いっぱい売れるといいな。」


そう言った聡志に近寄ると、私は背伸びをして、チュッ。


「じゃね。」


「家着いたら、LINEしろよ。家に帰りつくまでが、デ-トだから。」


「うん。」


そう言って、笑顔を交わすと、私は列車に乗り込む。ドアが閉まり、列車が走り出し、あっという間にお互いの姿が見えなくなって・・・この寂しくて、切なくて、大っ嫌いな時間を、いつになったら、迎えなくて済むようになるのかな・・・。