「私は聡志と一緒にいたいし、聡志を側で支えたいよ。だって、聡志が苦しんでる時に、知らん顔してて、聡志が成功した途端に寿退社なんてことになっちゃったら・・・虫が良すぎるでしょ。」


「別に知らん顔なんかしてねぇだろ。」


「えっ?」


「忙しい合間を縫って、俺のこと気にしてくれて、俺のこと応援してくれてんだろ?ちゃんと伝わってるよ、そんなこと。大丈夫だって。」


「聡志・・・。」


「お前、いい加減吹っ切れよ。もし、仕事を続けてることで、俺と一緒にいられないことに、お前が罪悪感を感じてるんだったら、俺達付き合ってる意味ねぇじゃん。」


そうだよね、このことはもう何度も話したよね・・・。


「俺がもし今、お前が側に居てくれないことに不安や不満を抱くくらいなら、最初っから強引にお前を仙台に連れて行ってるか、別れてるよ。」


「聡志・・・別れるなんて・・・。」


私がその言葉に動揺してると


「バカ、俺だってぜってぇやだよ。お前と別れるなんて。」


と言って、私を強く抱き寄せる聡志。


「俺は今、今年こそ、絶対に一軍のマウンドに上がって、結果を残す。そして、胸を張って、お前を迎えに神奈川に戻って来る。それしか考えてねぇ。その為に明日から全力を尽くす。だからお前も、俺が迎えに来た時、何も思い残すことがないように、力一杯仕事に打ち込め。いいな。」


「うん・・・わかった・・・。」


そう言って、潤んだ瞳で、聡志を見上げた私に


「由夏、見ててくれ。」


そう言い切った聡志がたまらなく愛しくて、頼もしかった。


そして、翌日、聡志は仙台に旅立った。それが、私にとっても、聡志にとっても、そして加奈と沖田くんにとっても激動の1年の始まりだったことを、当然私達は知る由もなかった。