「桜井と何、話してたんだ?」


まだお正月の2日、浅草の人の引きは早く、昼間の賑わいが嘘のようだった。2人で手をつなぎ、寄り添って歩く私達の周囲の、人の姿はまばらだった。


「うん?ま、いろいろかな。」


スカイツリ-では、意識してそうしたわけではないけど、なんとなく男子組と女子組みたいに、少し離れていた。


「そうか・・・気のせいかもしれねぇけど、なんか夜景を楽しみながらの雑談には見えなかったんでな。」


「そう?」


と、答えた私に


「そう言やさ、お前、なんで今年の抱負の話題、スル-したんだよ?」


「えっ?」


聡志が、じっと私を見つめて聞いて来る。実を言うと、今の聡志と同じ問いを加奈にされて、私達は、夜景を見ながらするには、少々似つかわないような話をしていたのだ。


「言いたくなかった、言えなかった、いや俺の前じゃ言いにくかった。そんなとこじゃねぇのか?」


「聡志・・・。」


まさしく図星、私が答えに窮していると


「桜井が今年の抱負は、恋より仕事を頑張るって言った時のお前の顔、ちゃんと見えてたから。」


と聡志。


「どんな顔してた?」


「複雑そうな顔してたぜ。私も仕事頑張りたいって、言いたいのに、言えなくて困ってるような。」


「・・・。」


「当然だと思うぜ、由夏がそう思うの。お前はなぜか、素直にその気持ちを俺の前では表さないけどさ。遠慮してるのか?」


「そんなこと・・・。」


「あるいは、昨日親父達に言われたこと、気にしてるのか?あんなの聞き流せよ、女の幸せは結婚にこそあるっていう、固定観念に凝り固まってる世代なんだから。」


「少なくとも私は、その意見、反対じゃないし!」


突然叫ぶように、そう言った私の顔をびっくりしたように見る聡志。