それから、話題はいつしか、今年の抱負に。


無事に第二子の出産を迎え、力を合わせて、ますます幸せな家庭を築くことと口を揃えた悠と先輩にあてられたあと、沖田くんに振られた聡志は


「もちろん、今年こそ一軍に食い込む。それしかねぇよ。」


と当たり前のように答える。それに対して


「二刀流が負担になってるじゃないのか?」


と沖田くん。


「いや、球団の方針だし、俺にとってもチャンスが広がるわけだから、それは関係ねぇよ。」


聡志の答えは、力強かった。私も実は、その懸念はずっと感じていたんだけど、今の聡志の言葉で、ホッとした。ただ、その横で先輩が複雑な表情を浮かべているのが気になった。


それから沖田くん、加奈と話は進んで行ったけど、私はスル-してしまった。けど、それを誰も突っ込んで来なかったから、その話はそれで終わりになった。


天麩羅屋を出た私達は、その後、近くのホテルのラウンジに場所を移して、更におしゃべりに花を咲かせたが、楽しい時間が過ぎるのは早い。話足りない様子の悠を引き摺るように、先輩達が帰宅の途に着き、私達は夜景を楽しもうと、スカイツリ-へ。


6年前も最後にここに上った。6人で、はしゃぎながら、綺麗な夜景を楽しんだことを思い出す。今日は4人、私と聡志はカレカノになり、加奈と沖田くんも、新たな関係を築く為の第一歩を歩み出そうとしてる。


今日の私達は、確かに高校生に戻ったように大いに喋り、食べて、楽しんだ。でも、当たり前だけど、私達はもう高校生じゃない。6年と言う月日は、間違いなく私達を変え、成長させ、そして何かを失わせていた・・・。


スカイツリ-を降り、私達はまたの再会を約束して、今日はサヨナラした。これから加奈と沖田くんはいろいろ二人きりになって、いろいろ話をするのだろう。


そして、私達も。聡志は明日、仙台に戻る。高校、大学野球部OB会参加の為に、一旦戻って来るけど、基本的には明日からはまた離れ離れ。今夜がしばしお別れの、最後の夜・・・。