高校卒業後も、交流を絶やすことのなかった私達だが、こうやって6人が一同に会するのは、先日の結婚式を除けば、卒業以来初めて。今日は懐かしい話に花を咲かせ、旧交を温め、そして今年のお互いの健康と健闘を誓い合うのが、目的なのは間違いないが、裏テーマもある。それは「加奈と沖田くん」。


加奈は高校の頃から、沖田くんに好意を持っていた。でも言い出せなかったのは、沖田くんには大学入学後、すぐに付き合い始めた彼女がいたからだ。その彼女が、白鳥先輩の妹の(ゆい)さんという、なかなか複雑微妙な状況だったのだが、その2人が結局破局してしまい、加奈は思い切って、沖田くんに思いを打ち明けた。大学卒業を間近に開かれた同窓会でのことだった。


でも、沖田くんの返事はノ-。失恋から半年も経っていない時期で、彼の心の傷はまだまだ生々しく、深かったのだ。


でも、私達はかねて、2人はお似合いだと思っていた。自分の妹の我が儘で、可愛い後輩を傷つけることになった先輩も心を痛めていた。失恋から2年以上経ち、沖田くんの心境にもさすがに変化が見え始めたと思われ、今日が2人の関係が変わっていくいいきっかけになればと思っていた。


その意図を、2人にはもちろん伝えてはいなかったけど、今日2人は待ち合わせて現れた。聞けば、先輩の結婚式のことや今回のことで連絡を取り合うようになって、既にメル友状態にはなってるらしい。いい感じで、結構なことだ。


食事の間も話は大いに弾み、妊婦さんになっても、いやなったからこそか、衰えを知らない悠の食欲をいじったりしていたら、突然、先輩が切り出して来た。


「そう言えば、今更だけど、前回ここに来た時のツカと岩武は険悪だったよなぁ。」


実は何を隠そう、前回の裏テーマこそ、「私と聡志をなんとかしてやろう」だったのだ。みなさん曰く


「お互い、想い合ってるのが、見え見え。」


だったにも関わらず、意地を張り合っている私達をなんとかしてやろうとしてくれてた・・・らしい。


「ええ、俺達、気を遣ったんだからな。」


そう答えた沖田くんに


「嘘つけ。由夏に聞こえるようにいろいろ言って、ますます俺達を険悪にしたのは、どこの誰だ。」


と嚙み付く聡志。


「だからあれは、お前達の為を思ってのことだって、もう何度も言っただろ。」


と反論する沖田くん。あの頃の私達は、まだまだ子供で、そんなみんなの応援に、全然応えられなくて、結局、更に一波乱も二波乱も加えなきゃならなかった。みんな、ホントにごめんね。