結局、なんだかんだで、家を出たのは9時近くなってしまったが、それでも今日はたっぷりデートを楽しめそうだ。


「聡志。」


駅へ向かう道すがら、由夏が、声を掛けて来た。


「うん?」


「お帰り。1年間、お疲れ様でした。」


「なんだよ、今更、急に。」


「だって、ちゃんと言ってなかったから。」


「そうか。ありがとうな。でも、結果は出なかったから・・・。」


そう言って、俺が複雑な表情をすると


「それはそうかもしれないけど、でも勝負は時の運っていう言葉もあるじゃない。だから、今日からは少し骨休め。由夏との時間を楽しんで、来季への英気を養って。」


そう言って、そっと腕を絡めてくる由夏。今日の由夏は、どうやら究極の甘えモード。自分を名前呼びしてるのが、その証拠だ。


「ああ。じゃ、そうさせてもらうぜ。」


そう答えた俺の顔を見て、由夏は本当に嬉しそうに頷いた。


今日の目的地は江ノ島。江ノ島と言えば、海、海水浴イコール夏のイメージが強いだろうが、どうしてどうして。


まず訪れた新江ノ島水族館は、季節を問わない鉄板スポット。手をつないで、水槽を優雅に泳ぐ魚達やアトラクションを見て回れば、あっと言う間に時間は経って行く。


食事処やおしゃれなカフェには事欠かないし、江の島の玄関口、江の島弁天橋から見る夕日は、天気がいいときは、うっすらと富士山も目の入る絶景。寄り添って、眺めていれば寒さなんか気にならない。


展望灯台である江の島シ-キャンドルは、江の島全貌が見渡せ、夜のライトアップは綺麗だし、今日はそこまで欲張れないけど、少し足を延ばせば、鎌倉の街もそんな遠くない。


それに何と言っても、江ノ電ののどかさには、心癒される。夏ほどは車は混まないけど、俺は江の島には、江ノ電で行くことを是非お勧めしたい。


と江の島の観光大使を務め終わったところで、自分達の話に戻ると、俺達は今、シ-キャンドルの展望台から、夜の江の島を満喫中。


「キレイだね。」


「ああ。」


「1日、あっと言う間だった。早起きして、よかったでしょ?」


「まぁな。」


「でも、まだまだ足んないぞ。なにしろ、クリスマスデート、ナシだったんだからな。」


「スマン。」


思わず謝る俺に


「ウソウソ。私がそっち行けなかったせいなんだから。」


と由夏は笑う。