「ところで・・・キレイになったな、岩武。」


「えっ?」


突然、ガラリと話題が変わり、俺が戸惑っていると


「俺は彼女と高1の時、クラス一緒だったから。松本さん絡みで、野球部のことも応援してくれてたし、沖田や水木を交えて、話しすることもあったんだ。」


と桜井やかつてのクラスメイト達と賑やかにおしゃべりを繰り広げてる由夏に視線を送りながら、懐かしそうに言う神。


「こんなこと、お前に言うべきじゃないのかもしれんが、当時俺、岩武のこと、ちょっと気になっててな。」


「そうなのか?」


初耳のカミングアウトに、俺は驚く。


「だが、2年からはクラスも違っちまったし、結局その気持ちを彼女にぶつける機会も勇気もなかったから。ま、アオハル時代の俺の一方的な淡い思い出だ。」


「・・・。」


「それにしても、まさかお前の許嫁だったとはな。」


「別に、許嫁じゃねぇよ。」


「でも5歳のお前の誕生日に、結婚の約束したんだろ?まぁありがちな話でもあるけど、よくぞそんな約束、律儀に守ってるよな。と言うより、そんなこと、よく恥ずかしげもなく、人に話せるよな。」


「からかってるのかよ。俺だって別に積極的に人に話してるつもりはねぇけど、なんかいつの間にか広まっちゃってるんだよ。」


思わずムキになって答えると


「照れんなよ。別にからかってるわけじゃない、正直羨ましいんだよ。」


「神・・・。」


「今の岩武、見ればわかる。ああ、お前達順調なんだな、岩武はお前に愛されて幸せなんだなって。」


「お前、急にどうしたんだよ。」


「わからねぇ、酔ってんのかもな。でもな、塚原。岩武のこと、大事にしてやれよ。」


「神・・・。」


「早く彼女を迎えに行けるようになれ。彼女はたぶん、お前になんにも言わないだろうけど、今日の水木の幸せな姿を見て、思うこともあるはずだぜ、きっと。」


「あ、ああ・・・。」


「お前は、岩武の想いと俺達同期の熱い期待を一身に背負っているんだからな。しっかり頼んだぜ!」


そう言うと、神は俺の背中を力いっぱいバチーンと叩きやがった。


「痛ぇな、お前。」


「そのくらい、我慢しろ。」


そう言って、神は大きな声で笑った。