「どうだ、プロは?」


「ああ、いろいろ厳しいな。野球が好きなことにかけては、人後に落ちないつもりだったけど、当たり前だけど、好きだけでどうにかなるような世界じゃないしな。」


いきなりマジっぽい話題を振られて、俺は少し姿勢を正しながら答える。


「確かに、プロに入るのはゴールじゃないしな。だが俺は今年も、スタートラインにも付けなかった。」


「神・・・。」


神もプロを目標にしている。大学卒業時にドラフトに掛からず、社会人野球に進んで、今年のドラフトで指名を待ったが、やはり吉報は届かなかった。


「今年がダメなら、来年がある。まだまだ野球は続けるつもりだし、諦めるつもりもないが、もし来年ドラフトに掛かっても、そしたら俺も26だ。プロ野球のルーキーとしちゃ、少々オールドだよな。」


「・・・。」


「そういう意味で、正直今年がラストチャンスだと思ってた。話が全然なかったわけじゃないし、指名順位にこだわりなんかないから、とにかくどこかに引っかからないかと、祈るような思いだったが、駄目だった。」


そう言って、苦笑いする神。


「俺はお前も知っての通り、足が速いわけでもないし、なんと言っても守備がお世辞にも得意とは言えない。打撃には多少自信はあるが、その程度じゃ、プロからお呼びはなかなか掛からんと言うことだな。」


寂しそうにそう言って、神は俺を見た。


「どうやら、塚原、お前が俺達のラストランナーだ。そのつもりで頑張ってくれよ。」


「神・・・。」


まさか、こんな席で、そんな話をされるとは思わず、俺はなかなか言葉も出て来ない。


「この雰囲気にそぐわない話とは思ったが、と言ってなかなか会う機会もないし、LINEとかで言う話でもないと思ったんでな、済まなかったな。」


そう言って、俺の肩をポンと叩く神。


「神、ありがとうな。でも、お前もまだ、あきらめるなよ。」


「ああ、わかった。まぁ、このままプロに行けなくても野球は身体が続く限り、辞めるつもりねぇし。」


俺の言葉に、神はニヤリと笑った。