それから半月ほど経って、ドラフト会議があり、2年前に無念の指名漏れの憂き目を見た大学の同期生、船橋鉄平が、今度は堂々とBuからドラフト1位で指名された。社会人チ-ムで2年、俺達に宣言した通りに、文字通り腕を磨き、社会人野球の甲子園と言える夏の都市対抗野球大会でのMVPを手土産に、プロに殴り込みを掛けて来た船橋。


「大学の同期だった大澤や塚原を始めとした、先にプロ入りした同世代の連中にとにかく負けたくない。その一心でこれまでやって来て、やっとアイツらと同じ舞台の立てることになりました。絶対奴らを倒して、世代NO1の選手になって、次に天下を狙います。」


指名を受けたあとの記者会見で、気負いを隠すことなく、そう言い切った船橋は、俺の目から見ても、格好よかった。


祝福のメ-ルを送ったら


『ありがとう。お前と同じリ-グだからな。容赦しないから、首を洗って待ってろよ。』


と来た。今年2桁勝利を挙げて、順調にプロ選手として階段を上がり続けている大澤と違い、そろそろ世間から忘れかけられてる俺の名前を、わざわざ会見で出してくれただけでなく、こんなメ-ルを送って、低迷続きのかつての同級生にエ-ルを送ってくれる船橋の友情が身に沁み、来年は必ず一軍で奴と対決すると、決意を新たにさせられた。


そして、その翌日が俺の来季に向けての契約更改の日だった。球団代表らが待つ部屋に呼び込まれた俺は、まず今季の労いの言葉を受けたが、その後の言葉は厳しかった。はっきり言って期待外れだったという球団代表に、俺は頭を下げるしかなかった。


そのあと、いくつかのやり取りをした後、来季の契約内容が提示され、年俸は現状維持、つまり上がりもしない代わりに、下げられないとのことで、今度こそダウン提示を覚悟していたから、またまた驚いた。ただその後、代表は


「来季こそ、晴れの二刀流を東北のファンに一軍で見せて欲しい。」


と言った。一瞬、橋上の顔が浮かんだ。けど、次の瞬間俺は


「わかりました。」


と答えていた。更改終了後には、俺クラスの選手でも記者会見がある。もちろん2、3の質問がくればいい方だが、来季への意気込みを聞かれた俺は


「来季こそ仙台スタジアム(Eの本拠地)で、二刀流をファンのみなさんにご披露します。」


と短くコメントして、席を立った。