「徹くんじゃないけど、本当にこんな可愛い生物が、この世にいるんだなぁって思う。最近はやっと落ち着いて来たけど、昼も夜も3時間おきにおっぱいあげなきゃいけなかったし、徹くんは出張の多いお仕事だから、舞と2人で、息の詰まる思いをすることもある。泣き止まなくて、途方に暮れたことも1度や2度じゃないし。でも、あばあば言いながら、私に無邪気に笑いかけてる顔見たら、そんなの全部吹っ飛んじゃって、何があっても、絶対この子を守ろうって思えて、抱きしめちゃうんだ。」


なんて話をしながら、舞ちゃんを見つめる悠の顔を私も加奈も、見つめてしまう。その視線に気付いて


「えっ、どうしたの?2人共。」


尋ねる悠に


「悠は凄いな、と思って。」


「由夏・・・?」


「つい、この間まで、私達と一緒にキャピキャピ言ってたはずなのに、すっかり優しくて凛々しいママになってるから。」


と言うと


「そんなこと、ないよ。」


と悠はまた、はにかんだ表情になる。


「悠が羨ましい。私も早く結婚して、ママになりたい。」


その横で、そんなことを言い出した加奈に


「悠の影響を受けて、加奈は恋愛願望通り越して、結婚願望急上昇だもんね。」


とちょっとからかい気味に私。


「だって、悠が本当に幸せそうなんだもん。それに引き換え、私の運命の人は一体、どこにいるんだろ?」


「役所の中に、いくらでも素敵な人がいるんじゃないの?」


「ダメダメ。同じキャリア組は歳が近い人は性別関係なくライバルだもん。ノンキャリアの人からは住む世界が違うと壁作られるし。外に目を向けようにも、合コンだってキャリア官僚なんて、男性から尻込みされて、企画自体が成立しないって、みんな嘆いてる。あ〜ぁ、なんで2人みたいに学生時代にちゃんと彼氏見つけられなかったんだろ。」


加奈がこんな赤裸々な本音を口にするのは、たぶん私達の前だけだろう。


「そう言う由夏は、悠が羨ましくないの?」


「メチャクチャ羨ましいよ。でも先輩と違って、今の聡志じゃ、あまりにも頼りなさ過ぎだから。もっとしっかりしてくんなきゃ、とてもとても。」


「厳しいね。」


「あたり前じゃん。だって私の彼氏はもっともっと出来る奴なんだから。」


「なに、結局惚気?もう悠の惚気だけで、お腹いっぱいなんですけど。」


「加奈!」


こんな会話を交わしながら、久しぶりの3人での定例会は、賑やかに過ぎて行った。