その時、俺はフッと息をついた。


「交代はない。とにかく腕を振って、思いっきり投げろ。」


そう言って、俺を見つめるコーチの言葉に1つ頷いた。


バッターボックスでは、敬愛する先輩、しかし今の俺にとって、最強と言っていい難敵が、静かに、圧倒的な迫力で、俺を見据えている。


(いよいよ待ったなし、勝負しかない。見ててくれ!)


俺は心の中で、遠くから声援を送ってくれているはずのあいつに、そう呼び掛けると、負けないようにバッターボックスの先輩を睨みつけた・・・。