『違う』
「え?」
『声がおかしい』
「・・・」
結局いつも、和哉にはごまかしも嘘も通用しない。
莉緒はふっと肩の力が抜けて笑ってしまった。
『市橋?』
心配そうな和哉の声に、莉緒は目を閉じた。

『市橋?どうした?大丈夫か?』
「・・・部長」
『ん?』
和哉の声はどこまでも優しい。
「何も聞かずに、頑張れって言ってくれますか?」
莉緒はレストランの前で目を閉じたまま和哉の声に集中する。
『・・・』
少しの沈黙の後、和哉はゆっくりと、落ち着いて声で言った。