そう言っておきながら耳まで赤くなる和哉に莉緒は笑った。
「それはセクハラです」
「すみません」
二人はくすくすと満員電車の中で声を殺して笑いあった。

「なんだ?その手帳」
目的の店の前。莉緒が自分のカバンから分厚い手帳を出すと、和哉がその手帳に視線を向けた。
「私の、趣味でもあり、仕事道具でもあります。」
莉緒はそういうと手帳の雑貨店のカテゴリーのページをめくった。
「見てもいいか?」
「見せるようなものではありませんけど」
そう言いながら莉緒は和哉が手帳を覗くのを止めなかった。

「すごいな」
和哉は素直に感心した。

その手帳には店の情報がびっしりだ。
「こんなにまわってんのか?」
「実際に回ったものと、雑誌やテレビの情報も入ってますよ?」
「すごいな。本当に。」