「こっち」
電車の中もかなり混雑している。
和哉は莉緒を窓際の空いているスペースに誘導するとその前に壁になるように立った。
「つかんでろ」
さっと莉緒の手を自分の持っているカバンに乗せる。

「・・・ありがとうございます。」
莉緒は照れ臭さと恥ずかしさに、思わずうつむいた。

やることがスマートすぎる。
これは意識してしまう・・・。

莉緒はうつむきながらちらりと和哉の方を見た。
背の高い和哉は莉緒の頭よりも上に目線がある。
したから見上げても、和哉の顔はかなり整っている。

それにしても…近い!
莉緒はもう一度視線を足元に戻した。