莉緒はすぐに支度をして立ち上がる。
和哉も脱いでいたジャケットを着て、カバンを持った。

「今日は電車で移動しよう」
「はい」
車ではなく、電車で移動することもこの仕事では多い。
客層や、その時間の交通の便に関しても情報を集めるのも、仕事のうちだ。

「古屋くん、お願いね」
莉緒は古屋に声をかけてから和哉の後ろについて歩いた。

二人で駅までの道を歩いていると、和哉が莉緒の歩幅に合わせてくれていることが伝わった。
身長の高い和哉の一歩は莉緒の1.5倍は大きい。
莉緒が急ぎ足で歩かなくてもいいように気付かってくれている和哉に、莉緒はこの気づきの広さが仕事にも表れていると感じた。

「この時間だから学生が多いと思うんだ。」
「はい。」
「近所の学校は?」
「中学校が5校、高校が3校、専門学校や大学等が5校です。」
「そっか」
「それから、学習塾が多いエリアです」