古屋の言葉に、和哉の言葉を莉緒は思いだしていた。

『そんな市橋も俺は嫌いじゃないし、むしろそんなお前を支えたいと思うよ。俺にできるなら。それで、いつかその責任感とかプライドとか、俺の前だけでもふっと脱がせられたら最高だな。』

もしかしたら、仕事仕事で、自分自身にプレッシャーをかけすぎていたのかもしれないと莉緒は思った。周りにも、その危機感のような、切羽詰まったような空気が伝わっていたんだろうな・・・。莉緒はそんなことを考えながらちらりと携帯を見た。

着信メールのランプがついている。

莉緒は自分の手帳に手を置いた。
開かなくても、その手帳の中に貼られた和哉からの付箋に触れているかのように、心が休まる。

莉緒は携帯のランプが見えないように伏せて仕事を再開した。


「市橋」
「はい。今行きます」
「了解」
和哉が3時になり莉緒に声をかけた。