「俺、ワインには弱いんだ。」
「え?」
「きっと明日にはお前の話、忘れてる。」
「・・・」
莉緒には和哉が言った言葉の意味が分かった。

「だから、忘れる前に言っとく。」
「なんですか?」
「・・・やっぱりお前は頑張ったな。」
「え?」
「頑張りすぎだろ。もっとおかしくなるくらい、泣きわめいてすがってもいいのに、お前はしなかった。」
「・・・」
和哉が莉緒の肩を自分の方へ抱き寄せた。

「相手の家族の存在を知ったからって、普通はそんなに聞き分けよくはいられないぞ。」
莉緒は和哉の落ち着いた声に、和哉の方に寄りかかった。
自分の気持ちもすべて預けるように。そして目を閉じた。
その瞬間新しい涙が伝う。