「降ります!」
じたばたして莉緒が背中から降りようとすると、和哉がギュッと莉緒をはなさない。

和哉は莉緒をおんぶしたまま、すたすたと歩いていく。

莉緒はその場所が和哉のマンションだと気が付いた。
「帰ります・・・」
小声で言う莉緒の言葉にも和哉は返事もせずに、自分の部屋に向かい歩いていく。

その大きくて広い背中に、莉緒はそっと力を抜いて寄りかかった。

「それでいいんだよ」
和哉がそう莉緒にささやく。
「疲れた時、しんどい時、つらい時、誰かに寄りかかることも必要だ。」
「・・・」
止まった涙がまた流れる。
「渡しといてよかったよ。」
和哉が言っているのはウインドブレーカーのことだ。