……こういうの久しぶりだな

怒ってる人に何を言っても火に油

だから
いつもなら相手が落ち着くのを待ってから
会話を試みるんだけど


「……矢橋君はみんなのものだったのに」


その言葉にぴくんと反応する


「みんなの矢橋君だったのに…」

「それをあなたが…っ」


ぎっと向けられた鋭い眼光は
激しい苛立ちと怒りを伴っていて

けど、私の意識は
自分に向けられたそんなものより
この子達が呟いた言葉に向いていた


「…ひとつだけいい?」

「なによ」

「こーくんはひとりの「人」だよ
物みたいに言わないで」

「なっ…!」


相手が激昂すればするほど
私の頭の中は冷静になって


小さな怒りがふつふつと湧いてきていた