部屋を出てしばらく歩くと、女王様が待つ王座の間と呼ばれる部屋に着く。
金と赤、ハートの装飾で作られた王座の間は、ハートの女王様に相応しく、とても優雅。赤い絨毯が敷いてある先に、部屋の中で最も高い位置には、謁見の間と呼ばれる大広間がある。奥には金と赤と女王の椅子。その女王の椅子に、女王様が不機嫌そうに座っていた。
「アリス! 遅いわよ!」
綺麗な金髪にウェーブがかかった長い髪。その頭には、薔薇のモチーフが装飾された女王の証である王冠を載せている。いつも不機嫌そうに寄せられた眉が、美人さに拍車をかけていた。
「アリス! いつまで間抜け顔で突っ立っているの! しっかりしなさい!」
女王様の声で、客人がいるのを忘れ、ぼんやりしていたことに気づく。慌てて周りを見渡すけれど、挨拶するべき相手が見当たない。
「あれ? お客さんは? 女王様短気だからなぁ」
お客さんの対応に面倒くさくなった女王様が追い出したのかもしれない。
「声に出ているわよ」
「あ」
女王様が鋭い視線を向けてくる。今にでもヒステリーを起こしそうな女王様は、いつにも増して眉間にシワが寄っている気がする。
ううん、気のせいだよね!
「客ならそこにいるわよ」