いつも二つに縛っているピンク色の髪をおろす。
女王様が用意してくれた白とピンクのドレスを着て、パーティーが開かれる会場に向かった。十四年間城で過ごしてきたから着る機会は多かったドレス。だけど着なれないからかやっぱりドレスには落ち着かない。
「おぉ。これはこれはアリス殿!」
後ろから聞こえた低い声。少し年齢を感じさせるこの声は……
「ジャックさん!」
「会場に向かう途中ですかな?アリス殿」
「うん。ジャックさんは仕事中?」
「いやいや、アリス殿のおかげで私も久々に休暇がとれましてな。お誕生日おめでとう、アリス殿」
直ぐに言わなくて申し訳ないですな、といってジャックさんが笑う。
「ありがとう。ジャックさん!」
「誕生日祝いに、ババ抜きでもいかがかな?」
ジャックさんはトランプを取り出しすと、器用にもパラパラと捲る。
小さな頃から私の世話をしてくれているハートのジャックさん。大のトランプ好きで、会うたびにトランプに誘ってくれる。楽しいからよく遊ぶけど、あまり遊んでいると女王様に叱られるんだよね。
「やりたい! けど、もうすぐパーティーが始まるからやめとくね」
「それは残念」
ジャックさんは肩を落とし、トランプをポケットにしまう。悪い事しちゃったかな?
「ジャックさんも、パーティー出てね!」
いつもジャックさんにはお世話になっているし、きてほしいな。それに、こうしてジャックさんとお話をするのも、もしかしたら旅が終わってからになるかもしれないんだ。