そよそよ、風が穏やかに吹いている。少し暑いと感じ始めた初夏の季節。


僕..雨谷瑞季(あまみや みずき)は、窓際の席で読書をしていて、ふと空を見上げた。





(なんだかつまんないなぁ...。自分)




サラサラとした黒髪は、光で少し蜂蜜色に輝く。
穏やかな風に体を向けながら、僕はゆっくりと目を閉じた。




僕は、これといって特技が無い。勉強もスポーツも、出来る方だけど別に当たり前だからなんだかしっくりこないし、


部活動だって、幼なじみに誘われたから陸上部に入ったんだし、


やりたい事も何も無い。




唯一好きだなぁ、って思うのは、こうして窓際の1番後ろの席で、穏やかに風を感じること。


それを友達に話したら、「お前はおじいちゃんかよ...」と呆れながら言われた。


その時は頭を殴られたみたいに衝撃的で、がぁんと落ち込んだけど、今は気にしていない。


本当はちょびっとだけ、気にしている...



けど、そうやってのんびりしていると、たまに思うのだ。


自分って、本当につまらないなぁ...って。