「ひゃっほーい!夏音からチョコもらったぜ!さいっこー!!」



あいつらだけじゃなく、後輩女子4人組にも見られたのは恥ずかしかったが、こうするしか方法がなかった。


声を出さなきゃ、泣きそうだった。


いや、もう...


泣いていた。


夏音からチョコをもらえたっていうのに、


1番大切な人からのチョコだっていうのに、


毎年必ずもらっていたあのチョコがなくなっただけでなんでこんなに泣けるのだろう。


中学ん時は郵送までして送って来たくせに。


去年だって懲りずに、オレより先に学校に来て机の脇にエンジの紙袋掛けてたじゃねえか。


なのに、


なんで今年はねえんだよ。


友チョコでもいい。


朽木奈和からのチョコを、オレは密かに楽しみにしてたんだよ...。


坂道を一気にかけ降りる。


涙が流れていく。


この涙が桜になる頃には、こんなわけの分からない悲しみは消えているのだろうか。


オレはただひたすらペダルを漕ぎ続けた。


あいつの笑顔が脳裏でうずいていた。