「到着~。美春とももは場所取りな」
肩越しから振り返り、えくぼを作って笑う俊ちゃんが言った。
「はあーい!!行こもも!!」
勢い良くドアを開けると、グイグイと私の手を引いて駆け出していた。
敷地内へ足を踏み入れると、少し伸びた芝生に足が埋まり、走りづらかった。
黄色や赤、紫や白の小さな花が咲いていて、ちょっとしたお花畑のようだ。
美春は、桜の木の前にベンチが置いてある場所に私を引っ張っていく。
「きゃー!!すっごい!!もも綺麗だねえ!!」
そう言って振り替えった美春は、頬をピンク色に染め、目を細めて笑っている。
「すごいねえ。綿菓子みたい」
無邪気に笑う美春に釣られて、私も微笑んで返していた。
ベンチに到着すると、並んで座って前を見た。
海の香りが風に乗って濃く香ってくる。
ヒラヒラと花びらが舞い落ちてきて、風と共に髪をさらっていく。