家の前に横付けてもらい、荷物を抱えた。
「ありがと。すぐ戻るね」
「転けんなよ~」
車から勢いを付けて飛び降り、ドアを閉めた。
外の門を開け、石段を登りながら広がる庭を横目に通りすぎると、すぐに玄関だ。
鍵を開け、重い扉を引いた。
しんと静まり返った我が家には、人の気配はまるでない。
たまに聞こえてくる電化製品の音だけが、虚しく耳に届いた。
『お帰り』
『ただいま』
この家で当たり前に聞いて、声にした言葉は、もう何年聞いてないだろうか。
五年の月日は、私だけ進んでしまった。
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