「お前まじもーちょい優しくしろ!!」
背中をしならせ悶絶すると、眉間にシワを寄せて口を開いた。
「思春期だから?」
からかうように言うと、口元だけで笑って見せた。
「うん」
真顔で答える瑠衣斗は、本気でそう思っているのだろうか。
「とりあえず出発しよ」
「何か納得いかねえ」
ぶつぶつ言う瑠衣斗を無視し、前に向き直った。
ブレーキからアクセルに踏み直し、ゆっくりと加速を始めた。
瑠衣斗の車には、いつも洋楽が流れている。どれも重低音がお腹に響く歌ばかりだ。
洋楽でもジャンルは気に入れば何でも聴く。
音楽の趣味がめちゃくちゃ合うので、車に乗ると会話はもっぱら音楽の話だ。
とてもマイナーな話だけども。
この曲はこうだ、あの曲はここが良かったとあーだこーだ話していると、10分程度で私の家に着いてしまった。