ピッと言う音を立て、瑠衣斗が壁の何かのボタンを押す音がした。

そのままソファーにドカッと座った瑠衣斗を目の前に眺めていたが、しばらくすると珈琲ができたのでマグカップに淹れ、2つのマグカップを持ってソファーまで寄っていった。

「はい。できたよ」

「お、わりいな」

そう言って受け取った瑠衣斗を確認すると、瑠衣斗の左側へ腰掛けた。


珈琲の良い香りが癒してくれる。ホッとした所で、新聞を眺めていた瑠衣斗に声を掛けた。


「今日はごめんね。ありがとう」

「ん?」

そう言って私に目を向けた瑠衣斗は、一瞬何を言われたか分からないような様子だったが、理解したように「あぁ!!」と一言言った。


「何かお礼しなきゃね。ご飯も作ってもらっちゃったし」

「お礼?」

「うん。何かお礼しなきゃ」

まだ瑠衣斗は私に目を向けていたが、気にせず前を見た。


「慶兄にもお礼しなきゃ…」

マグカップに口を埋めて囁く程小さく言ったので、この時は瑠衣斗に聞こえていないと思っていた。