いつの間にか、手が止まっている事に気付き、慌てて考えていた事から現象に戻った。


視線を目の前のテレビに移すと、グラビアアイドルやら芸人やらが、面白くもない話題に花を咲かせていた。


何が可笑しくてそんなに笑えるのだろうか。


虚しく私の耳を通りすぎる笑い声と話す内容は、まるで喋る人形のようだ。


人に歴史ありと言うが、こうして笑っている人達の中にも、想像を絶するような体験をした人も居るだろう。


すれ違うだけだった人にも、それぞれ人にはいろいろな人生があったに違いない。


やっぱり私は、どこか感情と言うものが欠落しているのかも。

「出来たぞ~」


振り返ると、トレーにいくつも湯気の立つ食器を乗せた瑠衣斗が、こちらへ向かってくる所だった。


「ありがとう」

そう言いながら、テーブルまで来た瑠衣斗から料理の入った食器を受け取り並べた。


「すごー!!相変わらず料理上手いね」


「とーぜん」