慶兄の気持ちを考えると、申し訳なさでたまらなくなる。
慶兄の広い背中に、そっと腕を回して、ぐっと抱き締めた。
「もも?」
一瞬驚いたように腕を緩めたが、またすぐにギュッと抱き締め返してくれた。
「―…ありがとう」
服がゴワゴワして、声も小さくてくぐもってしまった私の声に、慶兄は頭をポンと撫でた。
「いいよ」
神様……、本当に居るのなら、こんな迷いを打ち消して下さい。
何故あなたは、慶兄と私を出逢わせてしまったの?
もっと違う形なら、何か違っていたのかもしれないのに。
そう考えて遡ってみても、必然的に慶兄との出逢い方は変わらないという所に辿り着いてしまった。
瑠衣斗と出逢わなかったら良かったの……??
運命のイタズラって、本当にあるのかな。
慶兄にも、瑠衣斗とも出逢う事は、私の運命だったのかな。
全ての出逢いに意味があるのなら、別れにも意味があるのだろう。
あなたが私から奪い、与えたものは、どんな意味があるのだろう。
私には、考えても考えきれない。
想像もできない。
一期一会
『一生に一度出逢う事』は、決められた運命なのですか――?
ゆっくりと確実に、私の心のドアが開かれるようだ。
一度開いたら、全て溢れ出してしまう。
それを受け止める術はあるのだろうか。
私は、どうなってしまうんだろうか。
―…私の気持ちは…―――
そっと瞼を閉じた私の頬に、生温い涙が伝う。
―fin―