思わず前のめりになった瞬間、額に激しい痛みと鈍い音が頭の中に響いた。
「いっ……たああぁぁあ!!」
「ぶっ…はははは」
思い切りクローゼットに頭をぶつけて、崩れるようにしゃがみ込んだ私を、慶兄が後ろで大爆笑している。
一気に目が覚めたように、体の熱も急激に下がるようで、逆に顔が熱くなる。
でも、それどころじゃない。
顔ではなくて額が熱いのだ。
「も、もも…だ、だいじょぶ、かっ…くっ」
慶兄は何とか笑いを堪えようとしているらしいが、全く堪えきれていない。
「そんな…笑わないでよぉ。まじ痛いんだから」
脳みそ絶対ぷるぷるしたよ!!て…てゆーか…たんこぶできてるぅ!!
押さえていた手で額を撫でてみると、不自然に額の中央が膨らんでいる。
「悪い、まさか頭突きっ………んんっ、殴れとは言ったけど」
「頭突き!?違う〜…」
あぁ…何か泣きそう……痛いし恥ずかしいし。
でも、反面ホッとしている自分も居る。
こんな浮ついた気持ちのまま、慶兄となんて絶対ダメだ。
慶兄を傷付けたくない……。
「どれ、見せてみろ?」
「いっ…いい!!てゆーか嫌っ!!」
しゃがみ込んで私に顔を近付ける慶兄とは反対に顔を向け、両手で押さえて首をブンブン横に振った。
そんな私の腕を慶兄に掴まれ、思わず尻餅をついてしまった。
「どうしたんだよ?ここは暗くて何も見えないけど」
ハッとして逸らしていた顔を思わず慶兄に向けてしまい、再び俯いた。
「ぼんやり分かる」
「強情だなあ、いいから見せろ」
「いやー!!」
たんこぶ何て…単語自体久しぶりに自分でも聞いたよ!!
どうしよう。このまま腫れたまんまになっちゃったら……。
「まったく……よっと」
「う、うわあぁ」