「…はあ、やっぱり家が一番だなあ……やっと帰ってこれた…」


玄関に入って早々、慶兄が力なくそう呟き、足取りも重く流れるようにリビングへ歩いて行ってしまう。


鍵…締めた方がいいよね?いつもしっかりしている慶兄に、本当に疲れてるんだな……と思いながら、鍵を締めた。



靴を脱いで廊下に上がると、バサッと言う音がリビングから聞こえ、ゆっくりと伺うように顔を覗かせた。


き、着替えてるのかな!?てゆーか、まだ来慣れないと言うか、今更だけど何か緊張してきちゃったよ!!



「…あれ?」



広いリビングの中央にあるソファーが目に入り、そっと様子を伺う。


そこには、見事にソファーにダイブした様子の慶兄が、微動だにしないままソファーにうつ伏せになっていた。


「慶兄?」


「…う〜ん……カルテはそこの上…に…う」



夢の中まで仕事をしている慶兄に、思わず顔が緩んだ。


すぅすぅと寝息をたてる慶兄の無防備な寝顔が、可愛い。


乱れた髪が額にかかり、邪魔そうなのでそっと払ってやると、慶兄は一瞬軽く眉根を寄せ、再び安らかに寝息をたてている。


いつも大人な印象しかない慶兄の寝顔は、普段より幼く、やっぱり瑠衣斗にも似ている。


でも、やっぱりどこか違っていて、慶兄は慶兄で瑠衣斗は瑠衣斗だ。



「慶兄…?お風呂は?服シワになっちゃうよ?」


「ん〜…風呂…?シャワー済ませてきた…服……」



そっと耳元に顔を寄せると、確かにシャンプーの爽やかな香りがする。


「こんな場所で寝たら風邪ひくよ?起きて〜!!」


「……ん〜〜…」



眉を寄せ、一向に目を開けない慶兄に溜め息をつき、肩に手を掛けて大きく揺すった。



まったく!!そっくり兄弟がー!!



「起きてっ!!着替えてっ!!」


「んな〜っ、分かった…分かったから…」